更新:2025.06.09スマートSDSメディア編集部
2025年4月に労働安全衛生法の改正がなされ、SDS交付義務の対象物質が増加しました。加えて2026年にもSDS交付義務は拡大していくことが決定しています。
それに伴いSDS周りに業務負担が急増します。具体的には、SDSの作成に限らず、更新・管理・配布・受取・使用などさまざまな課題が発生します。本記事では、SDSの基本的な情報や、作り方の流れをわかりやすく整理し、記載すべき情報などを簡単にわかりやすくまとめています。
スマートSDSでは、こうした化学物質管理の法改正の最新の動向を踏まえ、「SDS関連業務の業務課題チェックシート」を無料で配布しています。ぜひダウンロードして業務にご活用ください。
SDSとは「安全データシート」の略で、Safety Date Sheet の頭文字をとったものになります。これは、化学物質を譲渡または提供する際に、その化学物質の危険性や取扱方法、保管方法などを提供相手に伝達するために交付されるものです。
SDSは労働安全衛生法など の各種法令により交付が義務付けられています。事業者にとってSDSは法令遵守のために重要であるほか、労働者の安全確保という意味でも大きな意味を持ちます。具体的には、事業者はSDSに記載された内容をもとにリスクアセスメントを行い、事業場における危険性や有害性を特定します。
詳しい記載内容に関しては「SDSに記載すべき情報」に記載しています。
また、SDSの記載内容に不安がある方は、最新の法規制に対応できているかや、記載内容にミスがないかを無料で診断する「SDS無料診断サービス」のご利用がおすすめです。詳細は以下のページからご覧ください。
MSDS(Material Safety Data Sheet)とはSDSの日本国内での旧称です。従来から海外では国連のGHSに基づいてSDSの呼称が使用されていたため、2017年に日本国内でも国際標準化の観点からSDSの呼称が使用されるようになりました。
SDSの交付は全ての化学物質に対して義務付けられているわけではありません。SDSの交付義務はSDS3法と呼ばれる、労働安全衛生法、化学物質排出把握管理法(化管法)、毒物及び劇物取締法(毒劇法)の3つの法令によって定められています。ただし、これらの法令で義務が定められていない物質に対してもSDS交付は努力義務となっている点に注意してください。
SDS交付義務対象物質は、該当する単一化学物質を提供する際に発生するのはもちろんのこと、当該物質を成分にもつ混合物を提供する際にも義務が発生します。なお、混合物を提供する際には基本的に、SDS交付義務が発生するための濃度下限値が定められています。それぞれの法令において物質ごとに値が定められており、次のサイトで確認可能です。
2025年4月現在では、約1500の物質がSDS交付義務の対象となっています。具体的な物質名に関してはそれぞれについて以下のサイトから確認できます。
安衛法に基づく対象物質 | |
化管法に基づく対象物質 | |
毒劇法に基づく対象物質 |
SDS交付義務の例外事項に関しては、各法令で微妙に内容が異なります。以下、それぞれの法律の例外事項を解説します。
なお、SDSは化学品を事業者から他の事業者へと譲渡・提供する際に交付が必要なものです、したがって一般消費者向けに製品が提供される場合は参照する法律にかかわらず交付義務の対象外となります。
こちらに関しては、「一般消費者の生活の用に供される製品」としてSDS交付義務の除外事項が定められています。一般消費者の生活の用に供される製品には以下のものが含まれます。
労働安全衛生法に基づくSDS交付義務の除外事項に関しては、別記事「一般消費者の生活の用に供される製品とは? 労働安全衛生法に基づくSDS交付義務の判断基準を具体例をもとに解説」で詳しく解説しておりますので合わせてご確認ください。
化管法に基づくSDS交付義務の例外事項は以下のような物質に適用されます。
対象となっている化学物質の含有量が基準値以下の混合物もSDS交付義務は発生しません。
毒劇法に基づくSDS交付義務の例外事項は以下のような物質に適用されます。
SDS3法の中でも、労働安全衛生法に関しては労働環境の変化やリスクの増加に対応するため近年複数回改正されており、今後も数回の改正が予定されています。
直近の改正では、2024年4月のものが挙げられ、自律的な化学物質管理への転換を掲げてさまざまな改正が行われました。そのうちの一つとしてSDS交付義務対象物質が674物質から896物質へと拡大され、今後数年にわたって対象物質の範囲を拡大していくことが決定されました。
2025年4月にも改正が行われ、現在では約1600の物質が対象となっています。また、2026年4月1日に改正が予定されており、約700ほどの物質が追加されます。結果として2026年には約2300の化学物質がSDS交付義務の対象となる予定であり、SDSに関する業務の負担が激増することが予想されます。
SDSに記載すべき項目はSDS3法によってそれぞれ定められており、法令ごとにその内容が異なります。
ただし、物質ごとに対応する法令と記載内容を把握しSDSを作成することは困難であるため、全ての法令に対応したSDSの記載方法がJIS Z7253で規定されています。JIS Z7253については後述しますが、この内容に準拠したSDSを作成すれば、労働安全衛生法、化管法、毒劇法の3法全てに対応できることになります。
労働安全衛生法ではSDSの通知項目として以下の12個の項目を定めています。
なお、「想定される用途及び当該用途における使用上の注意」に関しては2024年4月の労働安全衛生法で追加された項目となります。これらの労働安全衛生法によって定められたSDSの記載内容と、JIS Z7253によって定められている記載内容の比較についても後述していますので、併せてご利用ください。
化管法では、次の16の項目について以下の順番で日本語で記述することを定めています。
これらの化管法によって定められたSDSの記載内容と、JIS Z7253によって 定められている記載内容の比較についても後述していますので、併せてご利用ください。
毒劇法ではSDSの記載内容として以下の13項目を定めています。
これらの毒劇法によって定められたSDSの記載内容と、JIS Z7253によって定められている記載内容の比較についても後述していますので、併せてご利用ください。
基本的に、JIS Z7253にあるSDSの記載内容に遵守すれば上記の3法で定められている記載項目をすべてカバーすることができます。JIS Z7253では、SDSに記載すべき内容を下記の16項目で定めています。
この項目には、製品とその提供者に関する基本的な情報を記載します。
を記載します。*がついたものは記載が必須となります。ついていないものは記載が推奨されます(以下の項目についても同様となります)。
この項目には、扱う化学品に危険有害性があればその旨について簡潔に記載します。
SDSの第2項に関しては、別記事「【SDS第2項】危険有害性の要約とは? 危険有害性情報や注意書き、Pコード・Hコードについて実際のSDSをもとに解説」で当社のSDS作成ツール「スマートSDS」で作成した実際のSDSをもとに詳しく解説しておりますので、ぜひご利用ください。
この項目には、化学品に含まれる成分および含有率を記載します。
第3項に関しては、別記事「【SDS第3項】組成及び成分情報の書き方! 記載が必須となる成分や官報公示番号との対応を実際のSDSをもとに解説」で記載内容を詳しく解説していますので、併せてご利用ください。
この項目には、化学品に対するそれぞれのばく露経由に対して、必要があればそれぞれの応急処置方法を記載します。
この項目には、火災が発生した時の対処法や、注意すべき事項を記載します。
この項目には、化学品が漏出した際における対処法や、注意すべき事項を記載します。
この項目には、化学品を取り扱う際、および保管する際に注意すべき事項を記載します。
取扱に関しては、ばく露防止などのための適切な技術的対策と、当該物質を安全にに取り扱うための注意事項、及び保護具や局所換気などの接触回避などの情報を記載します。
保管に関しては、適切な保管条件及び避けるべき保管条件を記載します。その際、混合接触させてはならない化学物質及び安全な容器包装材料に関する情報を含めます。
この項目には、労働者が事業場内で化学品による被害を受けないためのばく露防止情報と、保護措置について記載します。
この項目には、化学品の性質について当てはまる事項を記載します。