更新:2025.05.27スマートSDSメディア編集部
化学品のGHS分類SDSやラベルを作成する際に必ず行わなければいけないのが、化学物質に対するGHS分類です。
GHS分類の結果はSDSの多くの項目に関わってくるため、分類を誤るとSDSの全体的な不備にもつながりかねません。
本記事では、GHSの分類や区分、絵表示について一覧をもとに説明したのち、GHS分類のやり方についてわかりやすく解説します。また、その結果がSDS作成やラベル表示にどのように関わってくるのかについても簡単に解説しています。化学物質を扱う事業者には必須の知識となりますので、ぜひご活用ください。
また、GHS分類なども含めた、作成に限らないSDSライフサイクル全体に生じてくる課題とその解決法についてこちらの資料にまとめています。今後の法改正を考慮した内容となっていますので併せてご利用ください。
GHSとは、「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(Globally Harmonized System of Classification and Labeling of Chemicals)」の略語で、国連によって定められた化学品の危険性や有害性を判断するための世界的に統一された一定の基準と分類システムのことを言います。
GHSは2003年7月に国連勧告として採択されたのち、2年に一度改訂されています。GHS文書の全文の日本語版はこちらの厚生労働省のサイトで確認できます。
日本国内においては、GHSに対応する2つの日本工業規格(JIS)が定められており、こちらに詳しいGHS分類のやり方と、それを元にしたラベル・SDSの記載方法が記されています。以下の二つになります。
・JIS Z 7252「GHSに基づく化学物質等の分類方法」
・JIS Z 7253「GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法-ラベル,作業場内の表示及び安全データシート(SDS)」
なお、JIS Z 7252および7253は2025年度の 改訂が予定されています。それに伴ってGHS分類の区分もいくつか変更」される予定です。詳しい内容については、「【2025年】JIS Z 7252/7253の改正について:SDSやGHS分類の最新規制動向を解説」をご覧ください。
GHS分類では、化学品をそれぞれの危険有害性クラスごとに定められた区分に分類します。危険有害性クラスは物理化学的危険性、健康に対する有害性、環境有害性の3種類に大別されます。さらに、それぞれの種類について、個別の危険有害性が以下のように該当しています。
危険有害性 | 区分 |
---|---|
爆発物 | 不安定爆発物、および等級1.1~1.6 |
可燃性ガス | 区分1A,1B,2 |
エアゾール | 区分1~3 |
酸化性ガス | 区分1のみ |
高圧ガス | 圧縮ガス、液化ガス、深冷液化ガス、溶解ガス |
引火性液体 | 区分1~4 |
可燃性固体 | 区分1~2 |
自己反応性化学品 | タイプA~G |
自然発火性液体 | 区分1のみ |
自然発火性固体 | 区分1のみ |
自己発熱性化学品 | 区分1~2 |
水反応可燃性化学品 | 区分1~3 |
酸化性液体 | 区分1~3 |
酸化性固体 | 区分1~3 |
有機過酸化物 | タイプA~G |
金属腐食性物質 | 区分1のみ |
鈍性化爆発物 | 区分1~4 |
危険有害性 | 区分 |
---|---|
急性毒性 | 区分1~5 |
皮膚腐食性/刺激性 | 区分1A,1B,1C,2,3 |
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1,2A,2B |
呼吸器感作性または皮膚感作性 | 区分1A,1B |
生殖細胞変異 | 区分1A,1B,2 |
発がん性 | 区分1A,1B,2 |
生殖毒性 | 区分1A,1B,2 |
特定標的臓器毒性(単回ばく露) | 区分1~3 |
特定標的臓器毒性(反復ばく露) | 区分1~2 |
誤えん有害性 | 区分1~2 |
危険有害性 | 区分 |
---|---|
水生環境有害性短期(急性) | 区分1~3 |
水生環境有害性長期(慢性) | 区分1~4 |
オゾン層への有害性 | 区分1のみ |
それぞれの区分の判別基準に関しては、複雑なものが多いため個別に解説しています。「GHSに関する記事一覧」から該当する記事をご覧ください。
GHSでは、分類結果に基づき化学品の危険有害性を視認性の高い絵標準で表します。以下にその絵表示のマークと、各マークに対応する危険有害性の区分を紹介します。絵表示はSDSやラベルに記載が必須の要素となっています。記載する際は以下のマークをダウンロードして使用してください。
対応する危険有害性の区分
対応する危険有害性の区分
対応する危険有害性の区分
対応する危険有害性の区分
対応する危険有害性の区分
対応する危険有害性の区分
対応する危険有害性の区分
対応する危険有害性の区分
対応する危険有害性の区分
それでは本項では実際に化学品に対してGHS分類を行い、危険有害性を特定する方法について簡単に解説します。
単一化学物質に関しては、基本的にその物質のGHS分類情報が公開されていることがほとんどです。情報を収集する際は、以下のような信頼できる発信元が公開している情報を参照しましょう。
厚生労働省が公開しているGHSに対応したモデルSDSです。労働安全衛生法およびGHS文書に基づく通知対象物質およびその他通知対象外物質の情報が公開されており、化学物質名や化学式、CAS番号での検索が可能です。こちらのリンクから検索サイトに飛ぶことができます。
検索後は以下のようにモデルSDSが表示されます。今回は例としてアクリルアミドのSDSを使用しています。GHS分類はSDSの第2項に記載されていますのでそちらを参照してください。
今回の場合だと、アクリルアミドに該当する危険有害性は、急性毒性(経口)の区分3、急性毒性(経皮)の区分3、眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性の区分2A、皮膚感作性の区分1、生殖細胞変異原性の区分1B、発がん性の区分1B、生殖毒性の区分1B、特定標的臓器毒性(単回ばく露)の区分1(神経系)、特定標的臓器毒性(反復ばく露)の区分1(神経系、眼、血液系、生殖器(男性))、水生環境有害性短期(急性)の区分3とわかります。
下部にはそれに対応するGHS絵表示が記載されています。
NITE-CHRIPは「独立法人製品評価技術基盤機構」が提供し ている、化学物質に関するデータを統合的に閲覧できる無料のオンラインデータベースです。
こちらのリンクからサイトに飛ぶことができます。トップページにある「お知らせ」欄からはNITE-CHRIPが最新の情報に合わせて定期的にデータを更新していることがわかり、信頼できるサイトであると言えます。
トップページを下にスクロールすると以下のような検索メニューが出ます。ある特定の物質に対する危険有害性を調べる際は、「化学物質から調べる」から行います。
次のページの一番上にある「番号から調べる」の欄にCAS番号を入力します。すると番号に対応する化学物質の情報が表示されます。今回はアクリルアミドのCAS番号である79-06-1で検索を行います。
検索結果画面をスクロールすると以下のように「有害性・リスク評価情報」という欄が表示されます。こちらに各所の物質に関する危険有害性を調査したページがまとめられています。先ほど紹介した厚生労働省のモデルSDSのページも確認できます。
GHSにおいては、既存の公開されている情報を全て集め分類を行うことを想定しています。これらのサイトによって情報を得られなかった場合でも情報を入手する努力義務があり、他にも海外のデータベースとしてEUのCLP調和分類やC&L inventoryなどがあります。ただし、GHSでは分類のために新たな試験を実施するまでは求めていません。必要な情報が入手できず分類ができなかった場合には、その旨をSDSまたはラベルに記載してください。
混合物のGHS分類を行う際は、原料のGHS分類とその含有の割合から製品の分類を推測する方法を取ります。そのため、まずは原料のGHS分類結果を把握する必要があります。その方法としては上記のように公開されている情報を集めるほか、原料の提供先からGHS分類に対応したSDSを入手する手段があります。
原料のGHS分類を把握した後は、それを元に製品のGHS分類を行います。この推測方法についてはそれぞれの危険有害性ごとに判断基準や計算式が示されています。具体的な個別の分類方法に関しては複雑であるため、国連GHS文書を参照するか、「GHSに関する記事一覧」から該当する記事をご覧ください。
混合物のGHS分類では、多くの危険有害性ごとに一つひとつ計算式や判断基準を適応して分類を行わなければならず、かなりの労力と時間を要します。ここに関して、原材料の情報とその含有率から混合物の危険有害性を自動で計算するツールが存在しますので紹介します。
NITE-Gmiccsは先ほど紹介した「独立法人製品評価技術基盤機構」が公開している、無料の混合物のGHS分類およびラベル作成ツールです。SDSに関しては法令と区分の項目しか作成できません。
Nite-Gmiccsは政府によるGHS分類データとCLP調和分類の一部のデータを収載しており、約3000~4000の単一化学物質のデータをもとに混合物のGHS分類を行います。収載されていないデータに関しては手作業で物質情報の入力が必要です。