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化管法(化学物質排出把握管理促進法)とは? 対象物質や改正などをわかりやすく解説

更新:2025.06.25スマートSDSメディア編集部

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化管法(化学物質排出把握管理促進法)は、日本で化学物質を扱うすべての事業者にとって必要な化学物質の取り扱い方を定めた重要な枠組みです。本記事では、その中心を成す2つのキーメカニズム―排出移動量届出(PRTR)制度と、安全データシート(SDS)制度―に焦点を当て、制度の目的と仕組み、最新の法改正動向、それぞれの対象物質等のポイントをまとめます。法令順守だけでなく、サプライチェーン全体のリスクマネジメントを強化したい企業担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

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化管法とは

化管法は正式には「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」といい、PRTR法や特定化学物質排出管理促進法などとも呼ばれます。

事業者による化学物質の自主的な管理改善の促進と、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的としており、PRTR制度SDS制度の二つの精度を定めています。

なお、SDS制度に関しては、化管法の他にも「労働安全衛生法」や「毒劇法(毒物および劇物取締法)」などにも定めらめられており、この3つはSDS3法などと呼ばれます。3つの法令に基づくSDSの扱いについては、別記事「SDS(安全データシート)とは? 交付義務や作成方法、項目について簡単にわかりやすく解説!」で詳しく解説していますので、そちらも併せてご確認ください。

本記事では、化管法に基づいたSDS制度とPRTR制度、及びその対象物質や法改正動向について最新の情報を元に解説しています。

化管法の対象物質

化管法では、定められた義務の対象となる化学物質の分類として、「第一種指定化学物質」「第二種指定化学物質」という二つを定めています。

第一種指定化学物質

第一種指定化学物質は、人や環境への有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に継続して広く存在する(暴露可能性がある)と認められる物質だとされており、現在計515の物質が定められています。

なお、第一種指定化学物質のうち、発がん性の懸念が高い物質など、特に重篤な障害を もたらす物質、あるいは強い生態毒性を持ち、難分解性・高蓄積性をもち、動植物の生育に 支障を及ぼす可能性が特に高い物質については「特定第一種指定化学物質」とされており、23の物質が指定されています。

第一種指定化学物質は、PRTR制度とSDS制度の両方の対象であるとされています。ただし、混合物の場合や、その他の条件によっては制度の例外となることもありますので、詳しくはそれぞれの制度の解説部分にて後述します。

第一種指定化学物質の具体的な物質名の一覧については、以下のリンクからダウンロードが可能です。

▶︎第一種指定化学物質の一覧をPDF形式でダウンロード

▶︎第一種指定化学物質の一覧をEXCEL形式でダウンロード

【引用】経済産業省:PRTR制度対象化学物質

第二種指定化学物質

第二種指定化学物質は、人や生態系への有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に広く存在する又は将来的に広く存在する可能性があると認められる物質だとされており、現在計134の物質が定められています。

第二種指定化学物質はSDS制度の対象ですが、PRTR制度の対象ではありません。したがって、化管法に基づくSDS制度においては、第一種指定化学物質と第二種指定化学物質を合わせた649の物質が対象となっています。ただし、こちらにおいても混合物の場合や、その他の条件によっては制度の例外となることもありますので、詳しくはSDS制度の解説部分にて後述します。

第二種指定化学物質の具体的な物質名の一覧については、以下のリンクからダウンロード可能です。

▶︎第二種指定化学物質の一覧をPDF形式でダウンロード

また、第一種指定化学物質および第二種指定化学物質の両方が記載された一覧は、以下からダウンロードできます。

▶︎指定化学物質の一覧をPDF形式でダウンロード

▶︎指定化学物質の一覧をEXCEL形式でダウンロード

【引用】経済産業省:化管法SDS制度対象化学物質

PTRT制度

PTRT制度とは、対象となる化学物質について、環境への排出量及び、廃棄物等に含まれる移動量を、事業者が把握をして国に届け出をしなければならないという制度です。国は届けられたデータに基づき、排出量・移動量を集計して公表します。

この把握は、個別の事業所ごと、対象となる物質ごとに行わなければなりません。対象となる事業者及び事業者や、詳細な対象物質については後述します。

なお、PRTR制度における排出量とは、大気や公共水域、土壌などへの排出や、埋立処分等を行った当該化学物質の量のことを指し、移動量とは、下水道への移動や排気等により事業所外に移動する量のことを指します。具体的な排出量、移動量の計算方法については、経済産業省が公表している「PRTR排出量等算出マニュアル」を参考にしながら算出してください。

PRTR制度の対象となる化学物質

PRTR制度の対象となる化学物質は、先述のとおり「第一種指定化学物質」に該当する化学物質ですが、いくつか例外事項がありますので、紹介します。以下の条件に当てはまる製品については、排出量等の把握、届け出をしなくて構いません。

  • 対象化学物質の含有量が少ないもの(第一種指定化学物質の場合は1%未満、特定第一種化学物質の場合は0.1%未満)
  • 事業者による取り扱いの過程において固体以外の状態にならず、かつ粉状または粒状にならない製品
  • 密閉された状態で使用する製品(乾電池等)
  • 一般消費者用の商品(家庭用洗剤等)
  • 再生資源(空き缶等)

PRTR制度の対象となる事業者及び事業所

PRTR制度で届け出を行わなければならない事業者及び事業所の要件は以下のとおりです。PRTR制度は事業所ごとに届け出が必要になるため、事業者の要件に該当する事業者の事業所の要件に該当する事業所が制度の対象となります。

事業場に関する要件

以下の両方に当てはまる場合PRTR制度の対象となります。

  • 政令で指定されている24の業種に該当する

事業者に関する要件です。以下の表の業種に該当する事業者はPRTR制度の対象となりえます。

PRTR制度 対象業種一覧表

【引用】nite:化管法の概要

  • 常用雇用者数が21人以上

こちらも事業者全体での規模となります。常用雇用者数とは、雇用期間を定めずに雇用されている労働者のことで、アルバイトやパートなども対象となります。具体的には、期間を定めずに雇用されている者、1か月を超える期間を定めて雇用されている者又は調査日前の2か月にそれぞれ18日以上雇用されている者のいずれかに該当する者をいう。と定められています。

以上の二つが事業者に関するPTRT制度の要件になります。上記の両方を満たしている事業者はPRTR制度の対象となり、以下の事業所に関する要件のいずれか一つに該当する場合は事業所単位で届け出を行わなければなりません。

事業所に関する要件

事業者に関する要件に該当している事業者については、以下のいずれかの要件に該当する事業所についてPRTR制度に基づく排出量・移動量の把握と、届け出を行わなければなりません。

  • 第一種指定化学物質の年間取扱量が1トン以上
  • 特定第一種指定化学物質の年間取扱量が0.5トン以上
  • 特別要件施設に該当する場合

なお、特別要件施設とは以下のような事業所のことを指します。

  • 金属鉱業又は原油及び 天然ガス鉱業を営む事業者の場合、鉱山保安法に規定する建設物、 工作物その他の施設のある事業所
  • 下水道業を営む事業者の場合、下水道終末処理施設のある事業所
  • ごみ処分業又は産業廃棄物処分業を営む事業者の場合、一般廃棄物処理施設又は産業廃棄物処理施設のある事業所
  • ダイオキシン類対策特別措置法に規定する特定施設に該当する事業所

PRTR届出事項

PRTR制度では、届出は各都道府県が受け付けます。届出を行わなければならない項目は以下のとおりです。

  • 事業者の名称
  • 法人番号
  • 事業所の名称
  • 事業所の所在地
  • 事業所において常時雇用される従業員の数
  • 事業所において行われている事業が属する業種
  • 担当者の氏名等
  • 第一種指定化学物質の名称
  • 第一種指定化学物質の管理番号
  • 大気への排出量
  • 公共水域への排出量
  • 当該事業所における土壌への排出量
  • 当該事業所における埋立処分量
  • 下水道への移動量
  • 当該事業所の外への移動量
  • 廃棄物の処理方法または種類
    PRTR届出資料1

    PRTR届出資料2

なお、こちらの提出書類は環境省のホームページからダウンロードが可能です。

PRTR届出方法

PRTR制度の届出の方法は3通りの方法があります。紙面による届出と、電子届出と、磁気ディスクによる届出の3つです。現在では、このうち電子届出が大半を占めており、磁気ディスクによる届出はほとんど見られないようです。

繰り返しになりますが、PRTRの届出は都道府県の窓口に対して行います窓口の一覧が環境省のPRTRインフォメーション広場からダウンロード可能ですので、ご利用ください。各手続きの方法について、どの窓口がどの方法に対応しているか等も確認できます。

届出には期間があり、毎年4月1日から6月30日までとされています。この期間の間に、いずれかの方法で届出を行なってください。

以下、それぞれの届出方法について簡単に解説します。

紙面による届出

届出書を紙で作成し、窓口へ持参するか、郵送で届出を行います。

届出書のフォーマットについては環境省のサイトにてPDF形式およびword形式でダウンロードが可能です。こちらに書き込み提出するのが良いでしょう。

電子届出

電子届出は現在経済産業省のサイト等でも最も推奨されている方法で、大半の届出が電子届出で行われているようです。

電子届出を行う際は、「PRTR届出システム」から届出を行うこととなります。

PRTR届出システム

PRTR届出システムにログインするためには、まず事業者が所属する都道府県の届出書提出窓口へ「電子情報処理組織使用届出書」を提出しなければなりません。こちらを提出し受理されると、ユーザーIDと初期パスワードが記載された書面が送付されます。なお、この提出は一度提出すれば次年度以降は再提出の必要なくシステムが利用できます。

なお、電子情報処理組織使用届出書は環境省のこちらのサイトからダウンロードでき、通年で提出を受け付けています。

PRTR届出システムでは、届出の作成から都道府県への送信までをワンストップで行うことができます。詳しくは、NITEが公開している操作マニュアルをご覧ください。

磁気ディスクによる提出

届出書を電子ファイルとして作成し、それを保存した磁気ディスクおよび磁気ディスク提出票を窓口に持参または郵送する方法です。

公表データ

PRTR制度に基づき集計されたデータは経済産業省および環境省が公表しており、誰でも個別の事業所単位で指定化学物質の排出量・移動量の確認ができます。

データは経済産業省のPRTR制度集計結果の公表ページや、環境省のPRTRインフォメーション広場で確認が可能です。また、PRTR公表データの閲覧、比較やファイル出力が行えるアプリケーション「PRTRけんさくん」というシステムも存在し、経済産業省のページからダウンロード可能です。

SDS制度

SDSとは、安全データシート(Safety Data Sheet)の略で、化学品の危険性や取り扱い方法を取引先へ伝達するために交付されるものです。事業者から事業者へと化学品を譲渡または提供する際には、SDSの交付が必要です。

SDSの交付は、化管法の他にも労働安全衛生法や毒劇法などの法律によって定められています。繰り返しになりますが、3つの法令に基づくSDSの扱いについては、別記事「SDS(安全データシート)とは? 交付義務や作成方法、項目について簡単にわかりやすく解説!」で詳しく解説していますので、そちらも併せてご確認ください。本記事では、化管法に基づくSDS制度について解説します。

なお、スマートSDSではお持ちのSDSについて、最新の法規制に対応できているかや、記載内容にミスがないかを無料で診断するサービスを行っております。近年の法規制の目まぐるしい変化に対して、もれなく対応できているかなどの確認が簡単に行えます。ご関心がございましたら、ぜひお気軽に以下のページからご利用ください。

SDS制度の対象となる化学物質

化管法に基づくSDS制度では、「第一種指定化学物質」と「第二種指定化学物質」の両方が交付義務の対象となります。PRTR制度と同様に例外事項がありますので、紹介します。また、化管法SDS制度では、SDSで危険性や有害性を通知すると同時に化管法ラベルによる表示を行うことが努力義務となっています。

  • 対象化学物質の含有量が少ないもの(特定第一種化学物質の場合は0.1%未満、それ以外の場合は1%未満)
  • 事業者による取り扱いの過程において固体以外の状態にならず、かつ粉状または粒状にならない製品
  • 密閉された状態で使用する製品(乾電池等)
  • 一般消費者用の商品(家庭用洗剤等)
  • 再生資源(空き缶等)

なお、PRTR制度では対象となる事業者、事業所についても要件がありましたが、SDS制度では事業者、事業所に関して要件はありません。事業者の規模や業種にかかわらず、対象物質を事業者間で提供する際にはSDSの交付が必要になります。

SDSに記載すべき項目

化管法SDS制度では、以下の16の項目を日本語でSDSに記載しなければならないと定められています。

  • 指定化学物質又は製品の名称、指定化学物質等取り締まり事業者の氏名又は名称、住所及び連絡先
  • 危険有害性の要約
  • 製品が含有する第一種指定化学物質又は第二種指定化学物質の名称及びその含有量(有効数字2桁)
  • 指定化学物質等により被害を受けたものに対する応急措置
  • 指定化学物質等を取り扱う事業所において火災が発生した場合に必要な措置
  • 指定化学物質等が漏出した際に必要な措置
  • 指定化学物質等の取り扱い上及び保管上の注意
  • 指定化学物質等を取り扱う事業場において人が当該指定化学物質等に暴露されることの防止に関する措置
  • 指定化学物質等の物理的化学的性状
  • 指定化学物質等の安定性及び反応性
  • 指定化学物質等の有害性
  • 指定化学物質等の環境影響
  • 指定化学物質等の廃棄上の注意
  • 指定化学物質等の輸送上の注意
  • 指定化学物質等について適用される法令
  • 指定化学物質等取り扱い事業者が必要と認める事項

なお、国内におけるSDS作成の標準的な規格であるJIS Z7253に記載の項目を満たすようSDSの作成を行えば、以上の16の項目を全て満たすことができます。JIS規格に則ってSDSを作成すれば、化管法以外の労働安全衛生法や、毒劇法に定められたSDSの用件も基本的に満たすことができため、基本的には規格をもとにSDSを作成することが推奨されます。各法令やJISで定められた要件については別記事「SDS(安全データシート)とは? 交付義務や作成方法、項目について簡単にわかりやすく解説!」で解説しておりますので、そちらもご確認ください。

SDSの提供方法

本項目では、化管法に基づき作成されたSDSの公開方法を解説します。これは令和4年の改正で改正が行われたトピックでもあります。

改正以前は化管法では、SDSの交付は文書を交付する方法のみが認められましたが、現在では、メールで送信する方法や、ウェブサイト等に掲載し、そのURLを通知する方法など、取引先が容易に閲覧できる方法も認められるようになりました。

こうした動きは労働安全衛生法でも発生しており、SDS取引の電子化を目指すムーブメントの始まりであると考えられます。

実際に、先日厚生労働省は、SDS電子化フォーマットを公開し、SDSを電子化する際の基準となるフォーマットを定めました。また、フォーマットに則ったツールを導入する企業には補助金を出すなど、SDS電子化の動きは今後さらに早まっていくでしょう。

スマートSDSは補助金に対応した導入のご案内が可能です。SDSの電子化をご検討中の方はぜひ一度お問い合わせください。

まとめ

今回は化管法について解説しました。化管法はPRTR制度とSDS制度の2本の柱からなる法令ですが、両者で対象となる化学物質が異なる点に注意が必要です。PRTR制度の対象でなくてもSDS制度の対象であるということがありえます。

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