リスクアセスメント

【2025最新】リスクアセスメント対象物について:一覧や化学物質管理との関係について解説

更新:2025.03.09
スマートSDSメディア編集部
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2025年4月1日にリスクアセスメント対象物が追加されます。

これに伴ってさまざまな事業者でリスクアセスメントの負担が増加するでしょう。ところによっては、今までリスクアセスメントをしていなかったが、急遽リスクアセスメントをしなければならなくなったということもあるかもしれません。

本記事では、リスクアセスメントの基本的な部分から始め、リスクアセスメントの対象となる物質や条件、およびSDS等の化学物質管理との関係について、最新の法改正情報をもとに解説します。

なお、こうした化学物質管理の法改正の最新の動向を踏まえ、スマートSDS Journalでは、改正を受けて生じる課題と、その解決方法について次の資料にチェックシートでまとめています。リスクアセスメントに関しても取り扱っていますので、是非ご利用ください。

SDSに関わる業務課題チェックシートCTA画像

リスクアセスメントとは

リスクアセスメントとは、労働安全衛生法において定められている「化学物質等による危険性または有害性の調査」のことを言います。

リスクアセスメントには主に機械等の設備に対するものと化学物質等に関するものがあります。今回は化学物質のリスクアセスメントについて解説します。

リスクアセスメントには様々な方法があり、対象となる物質や作業工程、事業場により方法が異なりますが、概ね以下の流れに沿って行われます。

  • 化学物質などによる危険性または有害性の特定
  • 特定された危険性・有害性に基づくリスクの見積もり
  • リスクの見積もり結果に基づくリスク低減措置の内容の検討
  • リスク低減措置の実施
  • リスクアセスメント結果の労働者への周知・教育

このうち、「化学物質などによる危険性または有害性の特定」から「リスクの見積もり結果に基づくリスク低減措置の内容の検討」までの一連の流れがリスクアセスメントと呼ばれます。

リスクアセスメントの結果を元にリスク低減措置が実施されますが、措置の結果によっては再度リスクの見積もりを行わなければならないこともあります。

化学物質のリスクアセスメントは、化学物質の危険性に対するリスクアセスメントと有害性に対するリスクアセスメントの二つに大別され、両者について行わなければなりません。

危険性および有害性のそれぞれについて、さまざまな方法からリスクアセスメントを支援するツールが各団体より公開されています。

危険性に関しては、厚生労働省の「爆発・火災等のリスクアセスメントのためのスクリーニング支援ツール」や数理モデルを用いた「CREATE_SIMPLE」、労働安全衛生総合研究所の「安衛研手法」などがあります。

有害性に関しては、「CREATE_SIMPLE」同様に利用できるほか、「コントロール・バンディング」や欧州化学物質生態毒性および毒性センターが開発した「ECETOC TRA」などがあります。

「CREATE_SIMPLE」は危険性と有害性のどちらにも使用できる上、比較的初級者向けですので、現在最も多くの事業者が利用していると言われています。自社の労働環境や実施できる測定方法などと併せて使用するツールを決定すると良いでしょう。

リスクアセスメント対象物

リスクアセスメント対象物とは

労働安全衛生法では、物質ごとにリスクアセスメントの実施義務と、リスクアセスメントの実施の努力義務を定めています。リスクアセスメント対象物とは、労働安全衛生法に基づきリスクアセスメントの実施が義務とされている物質のことです。

リスクアセスメントの実施は、当該物質を製造している事業者だけでなく、取り扱っているのみである事業場も対象となることに注意してください。

なお、リスクアセスメント対象物以外の化学物質についても労働安全衛生法ではリスクアセスメントの努力義務が定められています。リスクアセスメントは化学物質を扱う全ての事業者に関係のあることなのです。

リスクアセスメント対象物はどのように決まる?

単一化学物質の場合

単一化学物質については、労働安全衛生法において定められる表示・通知対象物質の一覧に該当する物質(リスクアセスメント対象物質と呼びます)がリスクアセスメントの対象となります。具体的な物質名については後述しています。

表示・通知対象物質とはSDSの交付およびラベルの表示が義務となる物質のことです。表示対象物質に該当する物質と通知対象物質に該当する物質は同じものになっています。表示・通知対象物質については別記事「表示対象物質と通知対象物質とは? 安衛法に基づく違いや一覧と、SDSとの関係について解説」が詳しいですのでこちらも参照してください。

混合物の場合

混合物については、表示対象物質を裾切値以上含む混合物、または通知対象物質を裾切値以上含む混合物が対象となります。

なお、基本的には通知対象物質の裾切値の方が値が小さいため、リスクアセスメント対象物の裾切値は通知対象物質の裾切値と一致します。つまり、SDS交付義務とリスクアセスメント実施義務が一致します。

裾切値とはリスクアセスメント対象物質に該当する成分の混合物中の濃度を基準とした値で、裾切値以上の濃度で当該物質が混合物に含まれれば、その混合物はリスクアセスメント対象物となります。

リスクアセスメント対象物 裾切値の例

【引用】厚生労働省:職場のあんぜんサイト

上記の表の「アセトン」を見ると、表示対象物質の裾切値が1%未満、通知対象物質の裾切値が0.1%未満です。したがって、アセトンを0.1%以上含んでいる混合物に対してはリスクアセスメントの実施が義務となります。

【関連記事】裾切値とは? 読み方やSDS、リスクアセスメントとの関係をわかりやすく解説

リスクアセスメント対象物質の一覧

リスクアセスメント対象物質は、2025年4月1日以前では労働安全衛生法に基づき896の物質が定められています。その一覧は厚生労働省の職場のあんぜんサイトからエクセルデータがダウンロード可能です。表示・通知対象物質の一覧として公表されています。

2025年4月1日以降には、これらの物質に対して新しく約700の物質が追加され、合計1600程度の物質がリスクアセスメント対象物質となります。また、この追加は2026年の4月1日にも行われることが決定しており、結果として約2300種類の物質がリスクアセスメント対象物となる予定です。

2025年4月1日および2026年4月1日に追加されるリスクアセスメント対象物質の一覧については、労働安全衛生総合研究所のサイト(ケミサポ)で確認できるほか、エクセルデータのダウンロードも可能です。

リスクアセスメント対象物質の増加

2024年4月以前、リスクアセスメント対象物は674物質でした。2024年以降リスクアセスメント対象物質は急ピッチで追加が行われています。

これは2022年5月の省令改正で導入された新しい化学物質管理体系が関係しています。

2021年ごろから政府は年間約50-100件の化学物質に対してGHS分類を実施してきました。2024年、2025年、2026年と行われる義務対象物質の追加はこのGHS分類の結果を反映したものとされています。

政府によるGHS分類は現在も継続しておこおなわれており、今後も継続することが予想されます。したがって2026年以降にも義務対象となる物質は定期的に増加していくと考えられます。実際、欧州などでは危険性または有害性の認められる1万以上の物質に対して規制が実施されている現状があり、日本でもいずれ同程度まで規制が拡大していくものと思われます。

リスクアセスメントはいつ行う?

リスクアセスメントの実施時期には、法令上で義務として定められている実施しなければならない時期と、厚生労働省による「化学物質等による危険性または有害性等の調査等に関する指針」で定められる実施努力義務に当たる時期があります。具体的な時期は以下のようになります。

実施義務

  • 化学物質等を原材料等として新規に採用し、又は変更するとき
  • 化学物質等を製造し、又は取り扱う業務に係る作業の方法又は手順を新規に採用し、又は変更するとき
  • 化学物質等による危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき

なお、3つ目の「化学物質等による危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき」には、取引先から「危険性または有害性」の項目が変更された更新SDSを受領した場合も含みます。

実施努力義務

  • 化学物質等に係る労働災害が発生した場合であって、過去のリスクアセスメント等の内容に問題がある場合
  • 前回のリスクアセスメント等から一定の期間が経過し、化学物質等に係る機械設備等の経年による劣化、労働者の入れ替わり等に伴う労働者の安全衛生に係る知識経験の変化、新たな安全衛生に係る知見の集積等があった場合
  • 既に製造し、又は取り扱っていた物質がリスクアセスメントの対象物質として新たに追加された場合など、当該化学物質等を製造し、又は取り扱う業務について過去にリスクアセスメント等を実施したことがない場合

リスクアセスメント対象物に課される義務

リスクアセスメント対象物にはリスクアセスメント以外にも複数の義務が課されます。

SDS交付

リスクアセスメント対象物を他の事業者に譲渡または提供する場合、基本的にSDSの交付が義務となります。リスクアセスメントの実施にはSDSに記載された内容が必要不可欠であるため、当該物質の受け取り先がリスクアセスメントを実施するためにSDSの交付は必要であると言えるでしょう。

SDSに関して詳しくは別記事「SDS(安全データシート)とは? 交付義務や作成方法、項目について簡単にわかりやすく解説!」をご覧ください。

ラベル表示

リスクアセスメント対象物については、GHSに基づいたラベル表示を行うことも義務となります。また、ラベルに関しては当該物質の譲渡・提供時のみならず、事業場内で当該物質を保管する場合においても表示を行わなければならない点に注意が必要です。

厚生労働省は、「ラベルでアクション」という運動を推進しています。これはラベルを確認した際には、事業者はSDSの確認とリスクアセスメントの実施、労働者はラベル内容の確認とリスクアセスメントの結果の確認を行おうというもので、ラベルを起点とした労働災害の防止を目的としたものです。

なお、リスクアセスメント対象物には該当するが、ラベル表示義務には該当しない場合があります。これはラベル表示義務の裾切値とSDS交付義務の裾切値ではSDS交付義務の裾切値の方が基本的に数値が小さいことから起こるものです。

化学物質管理者の選任

リスクアセスメント対象物を取り扱っている事業者は2024年4月1日より化学物質管理者という役職を選任する義務が生じるようになりました。化学物質管理者の選任に関しては当該物質を製造する事業者のみならず、取り扱っているだけの事業者も対象となっている点に注意してください。

化学物質管理者は「事業場における化学物質の管理に係る技術的事項を管理するもの」として位置付けられており、使用される化学物質の安全管理を担当する者のことを指します。

化学物質管理者について詳しくは別記事「【2024年選任義務化】化学物質管理者とは? 資格要件や職務、義務化対象についてわかりやすく解説」も併せてご確認ください。

リスクアセスメントを効率化する方法

リスクアセスメント対象物を扱っていることが判明した場合、適宜リスクアセスメントを実施しなければなりません。

そしてリスクアセスメントを行う際の基準となるのがSDSです。リスクアセスメントはSDSの内容を元にとり行われますが、肝心のSDSがしっかり管理できていないと職場全体でリスクアセスメントを行うのに大きな手間がかかります。

そこでおすすめしたいのがSDS作成・管理クラウド「スマートSDS」です。

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弊社では、高度な専門性が求められるSDS関連業務の業務負担を軽減するため、SDS作成・管理クラウド「スマートSDS」を提供しています。

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  • リスクアセスメント等に大きな手間がかかっており、効率化したい

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また、プランに応じて厚生労働省委託企業であるテクノヒル株式会社のサポートを受けることも可能です。

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