リスクアセスメント

濃度基準値とは? 設定物質の一覧や、SDS・リスクアセスメントとの関係を解説

更新:2025.03.06
スマートSDSメディア編集部
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リスクアセスメントを行う際に意識しなければならない数値の一つに濃度基準値があります。

濃度基準値は労働安全衛生法の新しい化学物質管理体系における事業者の義務に関連しており、事業場における労働災害を防ぐためにも重要です。しかし、管理濃度や許容濃度など似た値が複数存在し、少しややこしくなっているのも事実でしょう。

本記事では濃度基準値についてわかりやすく解説し、SDSやリスクアセスメントとの関係性についても解説します。

濃度基準値とは

濃度基準値は労働安全衛生法によって定められた値です。濃度基準値は、一定程度のばく露濃度以下に抑えることによって労働者の健康に対する有害性を抑えることができると考えられている物質に定められる値であり、濃度基準値が定められた物質を製造、または取り扱う屋内事業場においては、労働者の暴露濃度を濃度基準値以下にすることが義務付けられています。

この値はリスクアセスメントを行う際の一つの指標となる数値であり、2022年5月の省令改正で導入された新しい化学物質管理体系に伴って設定されたものです。

2024年4月の労働安全衛生法改正により濃度基準値が設定されている物質に関して、労働者のばく露を濃度基準値以下とすることが義務付けられた形になります。

濃度基準値の考え方

濃度基準値は有害性のある物質に対して、「このばく露濃度以下であれば健康障害が起こらない」という線引きをするものです。

「全ての物質は毒にも薬にもなる」というのは16世紀の化学者パラケルススの言葉ですが、こうした考えが現在の化学物質管理の基礎となっており、そのために用いられるのが「量-影響関係」と「量-反応関係」です。

これらの関係を簡単に説明すると、まず「量-影響関係」をもとに化学物質のばく露量により生物にどのような影響が生じるかを導き出し、その上で「量-反応関係」をもとにばく露量に対する影響の大きさを導きます。この結果に基づいて健康障害が起こらないと考えられる閾値以下に濃度基準値を設定すれば、労働災害を防ぐことができるというものです。

「量-影響関係」および「量-反応関係」に関しては別記事「量-影響関係、量-反応関係とは?化学物質管理の基本となる考え方について、違いなどをわかりやすく解説」で詳しく解説しています。

許容濃度・管理濃度との違い

濃度基準値と似たような数値に「許容濃度」と「管理濃度」があります。本項ではそれらとの違いを解説します。

許容濃度

許容濃度は労働者が1日8時間、週40時間程度の作業を通じて当該有害物質にばく露する場合に、ほぼすべての労働者に対して健康障害が見られないと判断される当該物質の平均ばく露濃度のことです。後述しますが。この考えは濃度基準値にも用いられており、実際に濃度基準値が決定される際に許容濃度が参考にされることも多いと言われています。

濃度基準値と許容濃度の違いはその発表元です。濃度基準値が労働安全衛生法によって定義された行政的な値であるのに対して、許容濃度は日本産業衛生学会やACGIHなどの諸団体によって発表されます。したがって濃度基準値には法的な拘束力がありますが、許容濃度はあくまで基準であり拘束力はありません。

なお、許容濃度に関しては別記事「許容濃度とは? 日本産業衛生学会やACGIHの定める値や一覧についてわかりやすく解説」も併せてご確認ください。

管理濃度

管理濃度も濃度基準値と同様労働安全衛生法に基づいた値です。

管理濃度は作業環境測定を行った結果として得られる作業場における有害物質の濃度を評価する基準として用いられます。したがって、管理濃度はあくまで作業場における空気中の対象物質の濃度として定められます。濃度基準値および許容濃度は労働者への暴露濃度をもとにしている点が大きな違いとなります。

管理濃度に関しては別記事「管理濃度とは? 一覧や許容濃度との違いについてわかりやすく解説」もご確認ください。

濃度基準値設定物質

濃度基準値が定められていう物質を濃度基準値設定物質と言います。濃度基準値設定物質は2025年3月現在で179物質あります。濃度基準値設定物質の一覧については厚生労働省の職場のあんぜんサイトから一覧のエクセルデータがダウンロードできます。

また、濃度基準値には「八時間濃度基準値」と「短時間濃度基準値」の2種類があります。濃度基準値設定物質のうちにはこの2種類のどちらも定められている物質もあれば、どちらか一方しか定められていない物質もあります。

濃度基準値設定物質一覧表

【引用】厚生労働省:濃度基準値設定物質一覧

参考:時間加重平均値とは

濃度基準値の数値は時間加重平均値という値をもとにしています。

時間加重平均とは、測定値に対してそれぞれの測定時間に応じた重み付けを行なって算出される値のことです。

時間加重平均の説明図

【引用】厚生労働省:労働安全衛生規則第577条の2第2項の規定に基づき、 厚生労働大臣が定める物及び濃度の基準が示されました

八時間濃度基準値

八時間濃度基準値は名前の通り八時間の測定による時間加重平均に対する基準値のことで、労働者が1日8時間、週5日の作業を行うことを想定しています。

濃度基準値が告示される濃度基準告示では、「ばく露濃度の八時間時間加重平均値が八時間濃度基準値を超えてはならないこと。」と義務が定められています。

短時間濃度基準値

短時間濃度基準値は、15分の測定による時間加重平均に対する基準値のことです。

濃度基準値が告示される濃度基準告示では、「ばく露濃度の十五分間時間加重平均値が短時間濃度基準値を超えてはならないこと。」と義務が定められています。

なお、いくつかの物質に関しては短時間濃度基準値が天井値として定められています。天井値とは平均値ではなく、いかなる瞬間のばく露に関しても超えてはいけない濃度基準のことで、以下の4物質に対して定められています。

  • アクロレイン
  • グルタアルデヒド
  • クロロピクリン
  • 2-ブテナール

努力義務について

濃度基準値に関しては、上記の義務の他に幾つかの努力義務が定められています。濃度基準値設定物質を扱う際にはこれらの努力義務を遵守するように努めてください。

  • 十五分間時間加重平均値が八時間濃度基準値を超え、かつ、短時間濃度基準値以下の場合には、ばく露の回数が1日の労働時間中に4回以内、かつ、間隔を1時間以上とするよう努めること。
  • 八時間濃度基準値が定められ、かつ、短時間濃度基準値が定められていないものについて、十五分間時間加重平均値が八時間濃度基準値を超える場合には、十五分間時間加重平均値が八時間濃度基準値の3倍を超えないように努めること。
  • 短時間濃度基準値が天井値として定められているものは、いかなる短時間のばく露でも短時間濃度基準値を超えないよう努めること。
  • 有害性の種類及び影響を及ぼす臓器が同一であるものを2種類以上含有する混合物の八時間濃度基準値又は短時間濃度基準値については、換算値が1を超えないように努めること。
    C=C1/L1+C2/L2+・・・
    (C:換算値、Cn:物の種類ごとの八時間時間加重平均値又は十五分間時間加重平均値、Ln:物の種類ごとの八時間濃度基準値又は短時間濃度基準値)

濃度基準値とSDS

濃度基準値はSDSの第3項「ばく露防止および保護措置」に管理濃度・許容濃度とともに記載が推奨されています。

なお、このSDSは自動でSDSの作成・管理が行えるクラウドソフト「スマートSDS」を使用して作成しています。SDS関連業務の効率化にご関心がある方は一度お問い合わせください。

濃度基準値のSDSへの記載例

濃度基準値のSDSへの記載は任意事項ですが、リスクアセスメント等を行う際には必須の数値となるため可能な限り記載をしておくべきでしょう。

濃度基準値とリスクアセスメント

2024年4月の労働安全衛生法改正によって事業者は濃度基準値設定物質を扱う屋内作業においては、労働者への当該物質のばく露量を濃度基準値以下としなければならないことが規定されました。

これによって、リスクアセスメントおよびその結果に基づくリスク低減措置に労働者へのばく露を濃度基準値以下とすることを盛り込まなければいけなくなりました。

具体的にはリスクの見積もりや測定結果の確認の際には濃度基準値を意識したリスクアセスメントの手順をとらなければなりません。

また、濃度基準値が定められていない物質に対しても、リスクアセスメント対象物であれば労働者へのばく露を必要最小限としなければならないという規定もあります。

こうした措置がリスクアセスメントおよびリスク低減措置に盛り込まれているか一度確認してみると良いでしょう。

リスクアセスメントを効率化する方法

近年、化学物質管理に関する法規制が厳しくなっています。化学物質を扱う事業者は適切な知識のもと、SDSを参照して事業場のリスクアセスメント、安全管理を行う必要があるでしょう。こうした安全管理にはSDSの適切な管理が不可欠です。

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