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SDSの第8項【ばく露防止及び保護措置】について ばく露限界値の管理方法や、管理濃度・許容濃度との関係性、リスク低減措置の具定例も踏まえてわかりやすく解説!

更新:2026.02.19スマートSDSメディア編集部

SDSの第8項【ばく露防止及び保護措置】について ばく露限界値の管理方法や、管理濃度・許容濃度との関係性、リスク低減措置の具定例も踏まえてわかりやすく解説!の記事本文サムネイル

SDSの受領にあたって、各項目にどのような内容がまとめられているのか、またそれを実際にどのように活用すればよいのか、網羅的に把握している人はそれほど多くないと思います。近年重要性が増しつつある8項【ばく露防止及び保護措置】は、事業所内における労働者の化学物質被害を低減するため、ばく露防止に関する情報や必要な保護措置について記載する項目です。作業者が用意すべき防護服や設備についても具体的に示されており、リスクアセスメントを行ううえで見逃せない箇所となっています。過去のスマートSDSジャーナル記事も参照しつつ第8項について包括的にまとめていきますので、ぜひ最後までご覧ください。


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ばく露防止について

まず、そもそも「ばく露」とはどういった概念か考えてみます。ここでは、作業者が化学物質に「さらされる」という意味合いでこの単語が使用されています。例えば、実験者が有害ガスを含んだ気体にさらされ、呼吸等を通じて体内に有害物質を摂取してしまう事象が「ばく露する」と表現されます。

ばく露した量(体に入った量)を「ばく露量」と言い、ばく露による健康有害性リスクは、「有害性×ばく露量」で導き出されます。

リスクの判断に必要な情報は以下の項目と考えられており、SDSの9項に記載される内容になります。

厚生労働省の公式HPより

【引用】国によるGHS分類から ばく露限界値設定までの流れ


ばく露限界値

ばく露限界値は、国による(GHS分類を基にした)SDS・ラベル作成後、ラベル表示・SDS交付義務化を経て、その後定められることになっています。ばく露限界値の定義と、ばく露限界値の管理方法については以下の通りです。

ばく露限界値の定義

  1. 自律管理における判断基準を明確化し、化学物質へのばく露防止対策の適切な実施を促進するために設定する指標値。 「労働者が吸入する有害物の濃度」を当該値以下に保つことを義務とする。 
  2. 労働者が1日8時間、週40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で化学物質にばく露される場合に、当該化学物質の平均ばく露濃度がこの数値以下であれば、「ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られない」と考えられる濃度。また、有害性情報に応じて、最大許容濃度(作業中のどの時間でも、ばく露濃度がこの数値以下であれば、健康上の悪影響を及ぼさないと判断される濃度)としてのばく露限界値を示すことも検討される。

ばく露量の管理方法

ばく露量の管理は、対象の化学物質を取り扱う事業所が主体となって実施します。管理の基本は実測による確認であり、作業者が実際にどの程度ばく露しているのかを把握するために行います。

実測の代表例としては、ガス検知管が挙げられます。国内では作業環境測定にも用いられており、簡易測定法として広く普及しています。さらに、測定対象に応じて次のような機器が使い分けられます。

  • 接触燃焼式(可燃性ガス)
  • 定電位電解式(一酸化炭素、硫化水素などの毒性ガス)
  • レーザー光散乱式相対濃度計(粉じん)
  • 光イオン化検知器(PID)を用いたVOCリアルタイムモニター

このように、物質の性状や作業内容に応じて測定方法を選定します。

一方で、CREATE-SIMPLEなどの数理モデルを用いた推定も可能とされています。ただし、複雑な作業工程や局所的なばく露が生じる現場では、実態を十分に反映できない場合があるため、推定結果を過信せず慎重に評価する必要があります。

また、防じんマスクや防毒マスクを使用している場合には、マスクの防護係数を考慮したうえで評価しましょう。実測値だけでなく、実際のばく露低減効果を踏まえて判断します。


第8項【ばく露防止及び保護措置】

ここまでばく露防止の意味を整理してきましたが、本章ではSDS第8項の具体的な記載内容を見ていきます。

管理濃度と許容濃度

日本に流通する多くのSDSには、管理濃度・許容濃度が記載されています。許容濃度には、日本産業衛生学会(以下、「産衛学会」)、米国産業衛生専門家会議(以下、「ACGIH」)のデータがよく用いられます。

イメージを筆者が作成

SDSでは、第8項に化学物質ごとの管理濃度や許容濃度が記載されています。これらの数値は、ばく露防止対策を検討するうえでの判断基準となるものです。

さらに、リスクアセスメントを実施する際に活用されるツールの一つであるCREATE-SIMPLEでも、管理濃度や許容濃度を基にリスクレベルの判定が行われます。そのため、第8項に記載された情報を正しく読み取り、適切なリスクの見積もりやリスク管理に反映させることが求められます。

管理濃度

労働安全衛生法第65条の2第2項に基づいて規定される値で、作業環境測定結果に基づいて作業環境を評価する際に基準となる値のことです。管理濃度とは? 一覧や許容濃度との違いについてわかりやすく解説で、SDSへの許容濃度の記載例や、許容濃度と管理濃度の違いについても書かれているのでご覧ください。

許容濃度

有害物質が存在し得る環境において、労働者が1日8時間、週40時間程度の作業を通じて当該有害物質にばく露する場合に、ほぼすべての労働者に対して健康障害が見られないと判断される当該物質の平均ばく露濃度を表します。ばく露限界値、許容ばく露限界ともいいます。許容濃度とは? 日本産業衛生学会やACGIHの定める値や一覧についてわかりやすく解説で、許容濃度のSDSへの記載例や産衛学会とACGIHについても詳しく書かれてるのでご覧ください。

キシレンの場合

例えば、キシレンのSDS第8項には、次のような許容濃度(ばく露限界値)が記載されています。

職場のあんぜんサイトより

【引用】製品安全データシート キシレン

日本産業衛生学会の許容濃度

労働者が1日8時間、週40時間程度ばく露した場合に、ほぼすべての労働者に健康障害が見られないと判断される平均ばく露濃度

ACGIH TLV-TWA

1日8時間、週40時間、職業人生を通じて繰り返しばく露しても、ほぼすべての労働者に健康への悪影響がないと考えられる時間加重平均濃度

ACGIH TLV-STEL

作業時間中のどの15分間においても超えてはならない平均ばく露濃度

このことから、キシレンは一番厳しい数値である50ppmにばく露量を抑えれば、有害性リスクを低減できるということがわかります。

厚生労働大臣が定める濃度基準値

もう1つ、少しややこしいことに「厚生労働大臣が定める濃度基準値」というフレーズがSDSに登場することがあります。厚生労働大臣が定めた物質を屋内作業場で製造し取り扱う業務に従事する労働者のばく露量は、厚生労働大臣が定めた濃度の基準以下にしなければならないと規定されており、その濃度を「厚生労働大臣が定める濃度基準値」と呼んでいます。

濃度基準値は厚生労働大臣が定めた一覧が労働安全衛生規則第577条の2第2項の規定に基づき厚生労働大臣が定める物及び厚生労働大臣が定める濃度の基準等(一覧)で示されています。2023年(令和5)年4月27日に告示された67物質から始まり、現在では179物質まで増加しています。

濃度基準値には、「八時間濃度基準」「短時間濃度基準値/天井値」が定められています。

また、濃度基準値が設定されている物質については、リスク見積りの過程において、労働者の当該物質ばく露量が濃度基準値を超えるおそれのある屋内作業を把握した場合、ばく露の程度が濃度基準値以下であることを確認するための測定を実施し、低減措置を行います。以下のようなばく露リスク低減措置 事例集を参考にすることもできます。

独立行政法人 労働者健康安全機構:ばく露リスク低減措置 事例集をもとに筆者が作成

(独立行政法人 労働者健康安全機構:ばく露リスク低減措置 事例集をもとに筆者が作成)


詳しくは、濃度基準値とは? 設定物質の一覧や、SDS・リスクアセスメントとの関係を解説で、濃度基準値の考え方から具体的な濃度基準値設定物質についても書かれているのでご覧ください。

保護具

最後に、保護具の項目について説明します。保護具は、呼吸用、手、眼・顔面等、さまざまな種類があります。いずれも、作業中の事故や危険から身体を守るために装着するものです。CREATE_SIMPLEに記載する内容でもあるのでリスクアセスメントをする方にも必見な項目です。SDSへの保護具記載と着用義務に関する指針:改正労働安全衛生法対応ポイントにて、記載内容としての「不浸透性の保護手袋」表記についてや、保護具の着用義務についても詳しく書かれているので参照ください。


まとめ

8項は、現場作業員が「有害物質のばく露から作業員を守るために、どの保護具を着けてどのくらいの量を扱うべきか」を具体的に指示するものです。作業員はそれらの指示に従い実行することで、法令に基づく安全を確保できます。製品を取り扱う際のリスク低減に直接つながる項目であるため、SDSを作成・提供する側においても、第8項の重要性を十分に認識し、ばく露防止に努めていきましょう。


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執筆者 スマートSDSメディア編集部
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