更新:2026.02.10スマートSDSメディア編集部

海外サプライヤーから輸入した化学品に、英語で書かれたSDS(安全データシート)が添付されていた場合、どのように対応していますか?「専門用語が多くて英語が難しい」「どうやって日本語に訳せばいいのかわからない」「日本の法令に適合したSDSを作成したい」、このような悩みを抱えている方は、少なくありません。また逆に、化学品を海外へ輸出する場合に「日本語のSDSをそのまま送ってもよいのか?」という疑問を持つ方もいます。今回は、これらの疑問を解消するための記事を書いていきます。
まず、輸入品SDSを海外サプライヤーから受け取った時、誰が、どこまで対応することが法的に義務付けられているのでしょうか?
厚生労働省のHPには、輸入した化学品を譲渡・提供する場合の責務に関するQ&Aが公開されています。
Q10-3. 輸入した化学品を譲渡又は提供する場合、ラベル及びSDSは英語表記で良いか。
A. 危険有害性や取扱い上の注意を、事業者、労働者が読めるようにすることが重要であるため、輸入品を日本国内で最初に譲渡・提供する事業者が、外国語を日本語に翻訳したラベルとSDSを作成して提供する必要があります。通達「労働安全衛生法等の一部を改正する法律等の施行等(化学物質等に係る表示及び文書交付制度の改善関係)に係る留意事項について」において、ラベルとSDSは邦文で記載するとしており、また、JIS Z 7253「GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法-ラベル,作業場内の表示及び安全データシート(SDS)」においてもラベル及びSDSは日本語で表記すると示されています。
上記のQ&Aを解釈すると、輸入元(今回のケースでは外国)から輸入先(今回のケースでは日本)に入ってきた化学品を国内で初めて譲渡する事業者に、日本語への翻訳および日本の法令に遵守したSDSの作成が義務付けられています。
「輸入元から輸入先に入ってきた化学品を国内で初めて譲渡する事業者」は、例えば、海外サプライヤーから化学品を輸入して国内メーカーに販売する商社、あるいは、海外サプライヤーから商社を経由せずに直接調達して協力先にSDSを提供するメーカー等が考えられます。
「輸入元から輸入先に入ってきた化学品を国内で初めて譲渡する事業者」に該当する事業者でも、時に「うちは翻訳なんてできないから取引先に英語SDSをそのまま渡している」というケースは少なくありません。
また「そのまま(海外サプライヤーが作成した外国語SDSのまま)ではいけない」ということは理解していても、そもそも「正しい対応」が何なのか、いまひとつ正確に理解していないケースもあります。
ここでいま一度、輸入品SDS対応として「正しい対応」とは何なのか考えてみましょう。
厚労省Q&AのAは、以下のようなロジックで書かれています。
ということは、「輸入元から輸入先に入ってきた化学品を国内で初めて譲渡する事業者」に求められるのは、「日本語訳すること」ではなく「JISに沿ったSDSに変換すること」ではないか、と考えられます。そう考えると、単に翻訳すれば良いのではなく、特に15項 適用法令の部分が気になります。
JIS Z 7252には、15項 適用法令について以下のように記載されています。
この項目には,化学品にSDSの提供が求められる特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律,労働安全衛生法,毒物及び劇物取締法に該当する化学品の場合には,化学品の名称と共に該当国内法令の名称及びその国内法令に基づく規制に関する情報を記載する。また,その他の適用される国内法令の名称及びその国内法令に基づく規制に関する情報を,化学品の名称と共に含めることが望ましい。
輸入品SDSには輸入元の国で定められている適用法令が記載されているため、日本語訳する際に、合わせて適用法令を日本に即した内容に書き直す必要があります。
次の章では、輸入SDSをJIS規格に沿ったSDSへと変換するうえでポイントとなる箇所を、海外SDSと日本語SDSの比較を通じて強調していきます。
輸入SDSと一口に言っても、海外サプライヤーの所在地は世界中さまざまです。欧州・北米・アジア、引いてはアジアの中でも中国・韓国では規格が異なります。(もちろん、GHSという大元のフォーマットは共通していますが、各国が自国の法令に合う形にSDS・ラベルの規格を定めているために、詳細部分は少しずつ異なっています)
この記事では、代表例としてEU加盟国のSDSを取り上げ、日本のSDSと対比しながら、EU加盟国のSDSを日本で流通させる場合にどのようなポイントを意識すべきか、確認していきます。
まず、SDS各項の具体的な違いを説明する前に、フォーマットに違いはあるのか、というところから始めていきます。EU加盟国におけるSDSの記載内容は、REACH規則(「化学品の登録、評価、認可および制限に関する欧州議会および 理事会規則(EC) No 1907/2006」“Registration, Evalution, Authorisation and Restriction of Chemicals”の頭文字を取ったもの)の第31条と附属書IIに規定されており、これはJIS Z 7253と同様、GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)に準拠した16項目で構成されています。やはり、前述の通り、16項から構成されている、という意味ではフォーマットに大きな違いはないようです。
この項で重要なのは、輸入SDSを取り扱う場合に、JIS規格で定められる「供給者」とは誰なのか?という点です。結論から書くと、ここでいう「供給者」は海外サプライヤーではなく「輸入元から輸入先に入ってきた化学品を国内で初めて譲渡する事業者」です。つまり、いまSDSを翻訳しようとしている事業者そのものです。
輸入SDSには海外サプライヤーの社名・住所・連絡先(電話番号・FAX等)が記載されていますが、このあたりは自社の情報に書き換える必要があります。
その際に、場合によっては、「製造者」という情報をSDSに加え、海外サプライヤーの情報を製造者の欄に、自社の情報を供給社の欄に記載することがあります。
JIS Z 7253には「当該化学品の国内製造事業者等の情報を,当該事業者の了解を得た上で,追記してもよい。」と「国内製造事業者」が限定されているため、海外製造事業者の対応は具体的に書かれていません。
なお、本記事では割愛しますが、1項に限らず、JISではSDSに記載必須と定められている項目が輸入SDSには存在しない、というケースは多々あり、その場合の追記はSDS全体を通じて必要となります。
3項に記載される成分名の翻訳については、成分ごとに与えられたCAS番号により整合性を判断でき、成分の一般名が定められている場合が多いため、日本語の一般名に翻訳して管理するケースが通常です。
この項で私が重要だと考えているのは「輸出元と日本では、成 分表示のルールが異なる」という点です。
例えば、PRTR法では該当成分の幅表記が禁じられていますが、EUではそういったルールはありません。具体的にはキシレンが3.3〜10%含まれている、と書かれた状態で輸入SDSが入ってきた場合、日本で流通させるためには、中央値を有効数値2桁で記載したうえで、注記に幅がある旨を記載する必要があります。
上記の例は「まだ良い方」です。より対応が困難なのは、「日本ではSDS・ラベルへの記載が義務付けられているが、EUでは義務付けられていない」物質が含まれている場合です。そもそもEUと日本では化学物質の有害性分類基準も異なることから、記載を義務付ける物質が完全一致しているわけではありません。その場合、輸出元の国(今回はEU圏内を想定)では記載が義務付けられていないために省略されている一方、実は日本では記載が義務付けられている、というケースが起こり得ます。この時、「輸入元から輸入先に入ってきた化学品を国内で初めて譲渡する事業者」は、海外サプライヤーに対して、「記載されている物質以外に、日本で記載が義務付けられている物質が含まれていないか?」を確認し、含まれている場合はヒアリングのうえで追記する必要がでてくる場合があります。
1項のパートでも記載しましたが、JISでは9項に(仮に具体 的なデータがない場合でも)記載が必須と定められている項目があります。以下、その項目を記載します。

(JIS Z 7253: 2019より)
輸入SDSには(実はこれは、輸入SDSに限らず、国内SDSでもそうですが)、上記の項目が全て書かれているとは限りません。その場合に、「輸入元から輸入先に入ってきた化学品を国内で初めて譲渡する事業者」の責務として、項目を追記したうえで「データなし」等の補足を付け加える必要があります。
また、これは特に米国の場合に該当するものですが、温度の単位を「華氏(°F)」から「摂氏(°C)」に変換する必要があります。°Fから30を引いて2で割ると°Cに変換できますので、ぜひこれは対応しましょう。小さなことに見えるかもしれませんが、もし引火点で単位を間違えていると消防法対応で大変なことになるので要注意です。80°Cと80°F(=25°C)では消防法の危険物分類が変わってきます。
改めてですが、SDSについての概要はGHSで国際的に定められているものの、法令に関しては各国で全 く異なり、危険性区分のリスク判断も差異が生じます。
例えば、ドイツやフランス、イタリアなどのEU圏内の国では、REACH規則とCLP規則に準拠して作成されますが、日本国内で製品を譲渡・提供する場合は、以下のSDS3法と呼ばれる日本法規に従ったSDS作成が求められます。
海外SDSのまま直訳してしまうと、日本の法規で要求される情報が含まれていないケースがあるので、日本での提供前には必ず、日本語への翻訳に加えて、JIS規格に沿った日本法規対応のSDSへの修正もしなければなりません。(JIS規格に沿って作成すればSDS3法を満たすSDSといえます。)
REACH規則とはRegistration,Evalution,Authorisation and Restriction of Chemicalsの略で、「化学物質の登録、評価、認可、制限に関する規則」となり、欧州連合(EU)における化学物質の総合的な登録・評価・認可・制限の制度です。
人の健康と環境の保護、欧州化学産業の競争力の維持向上を目的に2006年12月の欧州理事会で採決され、2007年6月1日に発効しました。
REACH規則で対象となるのは、化学物質そのものだけでなく、複数の物質を混ぜ合わせた混合物や溶液などの調剤中の物質、成形品(車や家電、雑貨などあらゆる製品や、その中にある部品など)中の物質など、すべての物質を対象としており、製造者や輸入者によって化学物質が登録される必要があります。(※農薬や医薬品は対象外です)
CLP規則とはRegulation on Classification, Labelling and Packaging of substances and mixturesの略で、「物質および混合物の分類・表示・包装」に関する欧州規則のことで、主にGHSと整合性を有し、かつEU独自の規制も加味した「化学品の分類、表示、包装に関する規則」です。その目的は、物質、混合物および成形品の自由な流通を促進させようとするもので、2009年1月20日に発効されました。
CLP規則で対象となるのは、原則としてEU域内で製造、輸入されるすべての化学品です。(※放射性物質や、税関の管理下に置かれた物質、単離されない中間などは対象外です)
また、日本とEU加盟国のSDS作成での大きな違いの一つに、UFIコードというものがあります。
UFIコードは、CLP規制において混合物への記載が義務となっており、混合物ごとの固有の16桁の英数字コードで、製品とその成分組成をEU毒物センター(PCN:Poison Centre Notification)で照合するために 用いられます。このコードは、誤飲・誤使用などの事故時に医療対応を迅速化する目的で導入されたものになります。たとえば、洗剤や香水などの化学混合物が体内に入った場合、救急医療機関がUFIコードをもとに正確な成分情報を即座に把握できます。洗剤、消毒液、漂白剤などの家庭用化学品、香水、ルームフレグランス、アロマオイルなどの可燃性混合物、塗料、接着剤、インク、潤滑油などの工業用混合物、スプレー缶、エアゾール製品などが対象となります。これは日本では義務ではないため、コードについての理解がないと混乱しやすいポイントです。
スマートSDSメイクには、本日ご紹介した輸入SDS対応のポイントが全て詰まった機能が搭載されています。操作方法はシンプルです。輸入SDSのPDFをアップロードすると、外国語で書かれた内容をAIがデジタル情報として抽出・翻訳し、最終的にはJIS規格に沿ったSDSへと仕上げられます。15項 適用法令のパートには、3項に記載された成分情報をベースに、最新の国内法令が挿入される仕様になっています。
(ただし、日本で表示が義務付けられている物質を海外サプライヤーが省略してしまっている場合は、輸入者によるヒアリングおよび情報追記が必要となります)