労働安全衛生法

管理濃度とは? 一覧や許容濃度との違いについてわかりやすく解説

更新:2025.03.06
スマートSDSメディア編集部
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化学物質管理で見逃せない指標の一つに管理濃度があります。管理濃度は2024年の労働安全衛生法改正にも関連し、作業環境測定に欠かせない重要な数値ですが、許容濃度等との違いが曖昧になっている方も多いのではないでしょうか?

本記事では、管理濃度や作業環境測定について、加えてもし管理濃度を超えてしまっていた場合にどうなるのかについても解説します。

管理濃度とは

管理濃度とは、作業環境測定の結果に基づいて作業環境管理を評価する際の基準となる値のことです。管理濃度は行政的に定められた値であり、労働安全衛生法第65条の2第2項に基づき定められる、作業環境評価基準によって規定されています。

2025年現在では97の物質に対して管理濃度が設定されています。具体的な物質名とそれぞれの管理濃度に関しては後述の表を参考にしてください。

作業環境測定を行わなければならない作業場では、管理濃度が定められている物質(および管理濃度が定められていないが作業環境測定対象物質と定められているいくつかの物質)に関して空気中の濃度を測定し、管理濃度と比較する必要があります。そしてその結果を元に作業環境管理を実施します。

管理濃度とSDS

管理濃度はSDSの第3項「ばく露防止および保護措置」への記載が推奨されています。

以下はSDS自動作成ツール「スマートSDS」を用いて作成したSDSのサンプルです。この場合では、エチルベンゼンに管理濃度が設定されているためその旨を記載しています。

なお、濃度基準値については「濃度基準値とは? 設定物質の一覧や、SDS・リスクアセスメントとの関係を解説」の記事を参照してください。許容濃度に関しては後述します。

これらの数値はいずれもSDSへの記載は任意となっていますが、リスクアセスメントを行う際に必須の数値となるため可能な限り記載することが望ましいでしょう。

管理濃度が設定されている物質一覧

管理濃度が設定されている物質は作業環境評価基準に物質名と管理濃度が一覧で示されています。以下からご覧ください。

厚生労働省:作業環境評価基準

参考:作業環境測定

労働安全衛生法には、「事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。」とあります。

作業環境測定を実施しなければならない作業場は、労働安全衛生法施行令第21条によって定められており、次の11種類が該当します。

  • 土石、岩石、鉱物、金属または炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場
  • 暑熱、寒冷または多湿の屋内作業場
  • 著しい騒音を発する屋内作業場
  • 坑内作業場
  • 中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物の室で、事務所の用に供されるもの
  • 放射線業務を行う作業場
  • 第 1 類もしくは第 2 類の特定化学物質を製造し、または取り扱う屋内作業場
  • 石綿を取り扱い、または試験研究のため製造する屋内作業場
  • 一定の鉛業務を行う屋内作業場
  • 酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の当該作業場
  • 有機溶剤を製造し、または取り扱う屋内作業場

なお、作業環境測定の対象となる物質に関してはほとんどが管理濃度が定められている物質ですが、いくつか管理濃度が定められていない物質も存在します。具体的な物質名は厚生労働省の資料「作業環境測定対象物質の管理濃度・許容濃度等一覧」を参照してください。

作業環境測定の技術的な指針は「作業環境測定基準」にそれぞれの項目に関して測定方法等が示されていますので、そちらを参照してください。

許容濃度との違いは?

許容濃度は作業場における有害物質の労働者へのばく露量の限度を決めたもので、日本産業衛生学会によって発表されているものです。

管理濃度が国によって定められた値であり、作業場自体の有害物質の濃度を基準としているのに対し、許容濃度は日本産業衛生学会によって定められた値で、労働者へのばく露濃度を基準に定められているという違いがあります。

また、管理濃度は国が定める値であるため法的な根拠がありますが、許容濃度に関しては法的な根拠はありません。

なお、許容濃度については別記事「許容濃度とは? 日本産業衛生学会やACGIHの定める値についてわかりやすく解説」も併せてご確認ください。

管理濃度を超えるとどうなるのか

作業環境測定の結果により、作業場は第1管理区分、第2管理区分、第3管理区分の三つに分類されます。その区分は管理濃度を基準として行われ、以下のとおりです。

第1管理区分

作業場所のほとんど(95 %以上)の場所で空気中の有害物質の濃度が管理濃度を超えない状態

第2管理区分

作業場所の空気中の有害物質の濃度の平均が管理濃度を超えない状態

第3管理区分

作業場所の空気中の有害物質の濃度の平均が管理濃度を超える状態

第1管理区分に区分された場合はなんの問題もありません。作業環境の維持に努めてください。

第2管理区分に区分された場合には作業方法の点検等および、それに応じた適切な措置をとる努力義務があります。

第3管理区分に区分された場合は直ちに対応を行うことが必要です。また、2024年の労働安全衛生法の改正により第三管理区分該当事業場に対する措置が強化されています。

作業環境測定結果 管理区分一覧

【引用】厚生労働省:化学物質管理者テキスト

第3管理区分に区分された場合

専門家の意見聴取

もし作業場が第3管理区分に区分された場合、事業者は直ちに該当場所の作業環境の改善の可否と、その改善方法について外部の作業環境管理専門家の意見を聞かなければなりません。

作業環境の改善が可能と判断された場合、作業環境管理専門家の意見をもとに必要な措置を行なった上で、再度作業環境測定を行いその効果を確認しなければなりません。

改善困難と判断された場合および、措置の効果が確認できない場合

作業環境管理専門家に作業環境の改善が困難と判断された場合および、必要な措置を講じたにもかかわらず測定結果が第3区分に分類された場合、以下の義務が発生します。

  • 濃度測定の結果をもとに、労働者に有効な呼吸用保護具を使用させること
  • 呼吸用保護具が適切に使用されていることを確認すること
  • 保護具着用管理責任者を選任し、呼吸用保護具に関する指導や管理を行わせること
  • 作業環境管理専門家の意見およびそれに基づく措置の結果を労働者に周知すること
  • これらの措置の実施内容を所轄労働基準監督署に提出すること

また、これらの措置を講じてから作業場の測定結果が改善されるまでの間、6ヶ月に1回の濃度測定とおよびそれに基づく保護具の選定、1年に1度の保護具の適切な使用の確認が義務付けられます。

参考:作業環境管理専門家とは

作業環境管理専門家は、事業場の化学物質管理に適切な判断を下すため外部の専門家であることが必要です。要件としては、以下のいずれかに該当すべきとされています。

  • 化学物質管理専門家の要件に該当する者
  • 労働衛生工学区分の労働衛生コンサルタント試験に合格し、3年以上の実務経験がある者
  • 化学区分の労働安全コンサルタント試験に合格し、3年以上の実務経験がある者
  • 衛生工学衛生管理者免許を受け、6年以上の実務経験がある者
  • 3年以上の衛生管理士としての実務経験がある者
  • 6年以上の作業環境測定士としての実務経験がある者
  • 作業環境測定士として4年以上を実務を経験し、厚生労働省の定める講習を修了した者
  • オキュペイショナルハイジニスト等の外国の資格を有する者

なお、作業環境管理専門家の名簿は以下のサイトで公開されています。専門家の利用が必要な場合にご利用ください。

日本作業環境測定協会ー作業環境管理専門家 名簿一覧

まとめ

今回は管理濃度について解説しました。2024年以降第3管理区分に区分されてしまった場合の措置が大幅に強化されたため、日頃から化学物質管理を怠らず、第3管理区分に区分されないようにする必要があります。

近年、化学物質管理に関する法規制が厳しくなっています。化学物質を扱う事業者は適切な知識のもと、SDSを参照して事業場の安全管理を行う必要があるでしょう。こうした安全管理にはSDSの適切な管理が不可欠です。

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