更新:2026.03.25スマートSDSメディア編集部

2025年4月1日に労働安全衛生法が改正されました。今回の改正内容はSDSの交付に関するものや現場でのリスクアセスメントに関するものなどさまざまで、化学物質を扱う事業者にとっては対応が急務となることでしょう。
本記事では、2025年4月1日に施行された労働安全衛生法の改正内容をお伝えいたします。
労働安全衛生法とは、労働者の安全と健康の確保を目的として1972年に制定された法律です。これは労働者に対してではなく労働者を雇用する事業者に対して定められた法律で、事業者が労働者の安全を守るために行うべきことを定めています。
労働安全衛生法は労働現場の最新状況に適合するため数回改正されています。最近では、2024年の4月1日にも改正が行われており、化学物質管理者の選任義務等が定められました。
2024年の改正で追加された内容については、別記事「【2024年】労働安全衛生法の改正まとめ:化学物質管理体系の変更について一覧で解説!」で網羅的に解説していますので、ぜひご覧ください。
そして、2025年4月1日にも労働安全衛生法が改正されました。2026年4月1日にも労働安全衛生法の改正が予定されています。
今回は直近の改正である2025年4月1日の ものを取り扱います。
2025年4月1日に行われた労働安全衛生法の改正内容は主に次の3つになります。
このうち一つ目の「表示・通知対象物質の追加」に関しては自社化学製品を提供・譲渡する際の危険性の伝達に関する改正であるのに対し、二つ目の「保護対象範囲の拡大」と三つ目の「請負人への周知義務」に関しては現場の従業員の安全確保に関する改正になります。ここからそれぞれについて詳しく解説します。
次回の改正では、労働安全衛生法で定められる義務の対象となる物質の範囲が拡大されました。
表示対象物質とは労働安全衛生法においてラベルによる名称等の表示が義務付けられている化学物質のことです。また、通知対象物質とは同じく労働安全衛生法によって当該物質の譲渡・提供時にSDSの交付が義務付けられている物質のことです。
表示対象物質および通知対象物質は、対象となる物質自体は同じものですが、それぞれ対象となるための混合物中の当該物質の濃度(以下、裾切り値)が異なります。
また、これらに該当する物質は同時にリスクアセスメントの対象でもあります。
したがって、現在SDS交付義務の対象外である事業場も、今後義務対象に追加される物質を扱っている場合SDS交付とラベル表示が義務付けられる可能性がある上、リスクアセスメントの実施と化学物質管理者の選任も義務付けられる可能性があります。
表示対象物質および通知対象物質については、別記事「表示対象物質と通知対象物質とは? 安衛法に基づく違いや一覧と、SDSとの関係について解説」で詳しく解説していますので併せてご利用ください。
今回の改正の背景には化学物質による労働災害をめぐる状況があります。
産業界で使用される化学物質の種類は年々増加しており、現在利用されているだけでもその数は7万以上あると言われています。一方で、2025年4月1日以前の労働安全衛生法で定められている表示・通知対象物質は厚生労働省のサイト職場のあんぜんサイトから確認できる896種のみです。この状況を逆手にとって、一部の工場などでは、使用していた化学物質が規制物質に指定されるとその物質の使用をやめ、規制の緩い似たような物質を十分な安全性の確認をせずに使うといったことが行われていました。
こうして規制外の物質に対する労働者のばく露リスクが増加し、化学物質による労働災害の約8割が、規制対象外の物質によるものとなっていたのです。
このような状況に対して厚生労働省は毎年50-100の化学物質のGHS分類等を行い危険性を特定してきました。今回の改正は政府によるGHS分類の結果を踏まえたものです。
詳細な改正内容としては、上記の厚生労働省のサイトから確認できる現在の896の表示・通知対象物質に加えて、2025年4月1日以降は約700の物質が新しく表示・通知対象物質となります。
今回追加される物質は、2021年3月31日までに政府がGHS分類を行なっていた物質のうち、有害性が区分1と区分されたものが対象となっています。
なお、これまで義務対象物質は労働安全衛生法施行令別表第9に追記する形で定められていましたが、2025年4月1日以降は厚生労働省令という形で規定されることになりました。また、改正後の義務対象物質の一覧については労働安全衛生規則別表第2に列挙されることとなります。
さらに、現状表示・通知対象物質である物質に関しても、一部の物質の裾切り値が変更されます。
具体的な追加される物質名や、変更される裾切り値については、労働安全衛生総合研究所(ケミサポ)のサイトから一覧表がダウンロードできます。「表示・通知対象物質の一覧をダウンロード」からもエクセルデータのダウンロードが可能です。
余談ですが、表示・通知対象物質は2026年4月1日にも追加されることが決定しています。そちらが追加された場合、対象物質は約2300種となります。
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2025年4月1日以降は、危険箇所等における作業の際の退避や立ち入り禁止等の措置について、その対象範囲が労働者以外の人にも拡大されます。
この改正の背景には建設アスベスト訴訟があります。建設アスベスト訴訟は建設業務等に従事していた元労働者等やその遺族が、石綿による健康被害の損害賠償を国に求めた訴訟で、2021年5月17日に最高裁判決において国敗訴が言い渡されました。
この判決のポイントは、労働安全衛生法第22条の「健康障害を防止するための措置」が労働者のみに限定されないと解釈された点です。
改正前は、危険箇所等で作業を行う場合には、自社の労働者に対してのみ健康障害を防止するための措置が義務化されていました。