リスクアセスメント

【2026年10月施行】個人ばく露測定の義務化について 義務の対象となる条件からガイドラインまで徹底解説!

更新:2026.09.08スマートSDSメディア編集部

【2026年10月施行】個人ばく露測定の義務化について 義務の対象となる条件からガイドラインまで徹底解説!の記事本文サムネイル

2026年10月1日、労働安全衛生法・作業環境測定法等の改正により、個人ばく露測定が作業環境測定の一つとして位置づけられます。あわせて、必要な講習を修了した作業環境測定士などの有資格者が、作業環境測定基準に従って測定を実施することが義務づけられます。では、なぜ従来の「場(環境)の測定」だけでなく、「個人(人間)の測定」が重視されるようになったのでしょうか。

本記事では、2026年10月施行の制度改正を踏まえ、個人ばく露測定が必要となる場面、測定実施者の要件、関連する基準・指針、従来型の作業環境測定との違いについて、わかりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。

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なぜ個人ばく露測定が求められるのか

近年、職場における化学物質管理は、取り扱われる物質の多様化や国際的な動向を踏まえ、事業者が自らリスクを把握し、その結果に基づいて適切な対策を講じる「自律的な化学物質管理」へと移行しています。

この新たな化学物質管理制度は、労働安全衛生規則等の改正により、2024年(令和6年)4月1日から施行されました。

制度改正の主な目的は、従来の個別規制の対象となっていなかった化学物質も含めて、労働者の健康障害を防止するための対策を強化することです。これにより、事業者には、リスクアセスメントの結果に基づいて、労働者のばく露を低減する措置を自ら選択し、実施することがこれまで以上に求められています。なお、自律的な化学物質管理については、別記事「自律的な化学物質管理とは? 個別規制型との違いを最新の労働安全衛生法に基づいて解説」で詳しく解説しています。

こうした自律的な化学物質管理を適切に進めるためには、労働者が化学物質にどの程度ばく露しているかを把握し、講じた対策が有効に機能しているかを確認しなければなりません。

そのための方法の一つとして、労働者の呼吸域における化学物質の濃度を測定する「個人ばく露測定」の重要性が高まっています。

個人ばく露測定とは

個人ばく露測定とは、労働者の身体の呼吸域付近に装着したサンプラーを用いて、化学物質へのばく露の程度を測定する方法です。

労働者が作業中に呼吸する空気に含まれる有害物質の濃度を測定するため、実際の作業状況に即して、労働者のばく露の程度を把握できることが特徴です。

また、サンプラーを労働者が身に着けた状態で測定するため、作業場所の移動や作業内容の変化、複数の作業への従事などを通じたばく露を反映しやすいという利点があります。

このため、一定の測定点における濃度だけでは捉えにくい、実際の作業に伴うばく露状況を評価し、より実態に即した化学物質管理につなげることができます。

一方、従来型の作業環境測定である「場の測定」は、作業場所ごとの定められた測定点などで空気中の有害物質濃度を測定し、作業場の環境が適切に管理されているかを評価する方法です。

つまり、従来の「場の測定」が作業場の環境を評価するのに対し、「個人ばく露測定」は作業者自身のばく露状況を把握する測定です。

なお、個人ばく露測定と従来型の作業環境測定、個人サンプリング法との違いについては、別記事「個人ばく露測定とは? ガイドラインや測定方法などの基礎から、作業環境測定や個人サンプリング法との違いまで解説!」で詳しく解説しています。


2026年10月施行で何が変わるのか

2026年10月1日、改正労働安全衛生法・作業環境測定法等が施行され、個人ばく露測定が「作業環境測定」の一つとして位置づけられます。今回の改正では、個人ばく露測定の精度を確保し、作業環境測定士等による適切な実施を担保するための仕組みが整備されます。改正内容については、厚生労働省の「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要」にまとめられています。

これまでにも、法令上、個人ばく露測定が必要とされるケースはありましたが、今回の改正では、労働安全衛生法には第65条の3が新設され、一定の場合に作業環境測定を行うことや、対象となる測定を作業環境測定基準に従って実施することが定められます。


労働安全衛生法第65条の3が新設される

まず、今回の改正では、新たに労働安全衛生法第65条の3が設けられます。

その内容を簡単に整理すると、次のとおりです。

①有害な原材料、ガス、蒸気、粉じんなどによる健康障害を防止するための措置を講じる場合のうち、厚生労働省令で定められた場合には、作業環境測定を行わなければならない。

②作業環境測定の結果を踏まえて、設備の設置・整備や作業環境の改善などの措置を講じた場合のうち、厚生労働省令で定められた場合には、作業環境測定を行わなければならない。

③通知対象物の危険性や有害性を調査する際には、必要に応じて作業環境測定を行うものとする。

④ ①から③までの作業環境測定は、厚生労働大臣の定める「作業環境測定基準」に従って実施しなければならない。

つまり、2026年10月から、化学物質を取り扱うすべての事業場に一律で個人ばく露測定が義務付けられるわけではありません。

取り扱う物質や作業内容、作業環境、リスクアセスメントの結果などを踏まえ、法令で測定が求められる場合や、労働者のばく露状況を把握するために測定が必要と判断される場合に実施します。

(健康障害の防止のための措置等に当たつて行う作業環境測定)

第六十五条の三 事業者は、第六十五条第一項に規定するもののほか、第二十二条の措置を講ずる場合であつて厚生労働省令で定めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、作業環境測定を行わなければならない。

2 事業者は、第六十五条第一項及び前項に規定するもののほか、前条第一項の措置を講ずる場合であつて厚生労働省令で定めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、作業環境測定を行わなければならない。

3 事業者は、第五十七条の三第一項の規定による調査を行うに当たり、必要に応じて、作業環境測定を行うものとする。

4 前三項の規定による作業環境測定は、第六十五条第二項に規定する作業環境測定基準に従つて行わなければならない。


個人ばく露測定の「精度確保」が強化される

もう一つの大きな変更が、個人ばく露測定の精度を確保する仕組みの強化です。

改正後は、指定作業場で個人ばく露測定を行う場合、デザインやサンプリングを、個人ばく露測定について必要な登録を受けた作業環境測定士等に実施させることが求められます。

さらに、対象となる個人ばく露測定は、作業環境測定基準に従って実施することになります。これにより、測定を「誰が、どのような方法で行うのか」が明確になり、測定結果の信頼性を確保する仕組みが整備されます。詳細は、厚生労働省の労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令等の施行等について(個人ばく露測定等関係)にまとめられています。

つまり、2026年10月の改正では、個人ばく露測定を作業環境測定として明確に位置づけるだけでなく、実施者や測定方法に関するルールを整え、測定の信頼性を高めることも大きなポイントです。


義務化の対象となる条件

個人ばく露測定は、化学物質を取り扱う状況ごとに行うべき対応も異なります。2026年10月以降、法令上、個人ばく露測定や作業環境測定が必要となる主なケースは、次のとおりです。

①改善困難な第三管理区分作業場において労働者の身体に装着する試料採取機器を用いて測定を行うとき

②①による測定を行った後、当該第三管理区分作業場において、6月以内ごとに1回、定期に、労働者の身体に装着する試料採取機器を用いて測定を行うとき

③金属アーク溶接等作業を継続的に行う屋内作業場において、新たな金属アーク溶接等作業の方法を採用しようとするとき等

④作業環境測定の結果が悪かったので改善した。その改善が本当に効いたかを確認するため、もう一度測定する場合

【引用】厚生労働省:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律等の施行等について(個人ばく露測定等関係)

特に、濃度基準値が設定されている物質について、リスクアセスメントの結果、労働者のばく露の程度が濃度基準値を超えるおそれのある屋内作業では、濃度基準値以下であることを確認するための「確認測定」を実施します。

自社が対象となるか確認する際は、「環境改善が困難な第三管理区分作業場に該当しないか」「金属アーク溶接等の対象作業を行っていないか」などを確認するとよいでしょう。

では、実際に個人ばく露測定を行う場合、どのような手順で実施するのでしょうか。

個人ばく露測定の実施方法

個人ばく露測定は、いきなり労働者にサンプラーを装着して測定するのではなく、対象となる作業や化学物質を確認し、測定計画を立てたうえで実施します。

日本産業衛生学会の「化学物質の個人ばく露測定のガイドライン」では、事前調査、測定計画、サンプリング、測定値の評価、リスク低減措置、フォローアップなどの流れが示されています。ここでは、実務の流れを5つのステップに分けて解説します。

①対象となる作業・化学物質を確認する

まず、SDSやリスクアセスメントの結果、作業内容などを確認し、どの化学物質・作業を測定対象とするかを決めます。

あわせて、取扱量や作業内容、換気設備の状況、過去の測定結果などから、どの程度ばく露する可能性があるかを確認し、測定の目的や優先順位を整理します。

②測定対象者・測定条件を決める

次に、同じまたは類似した作業内容や作業条件で、同程度のばく露が想定される労働者を整理し、その中からランダムに測定対象者を選定します。

また、対象物質や作業内容に応じて、使用するサンプラー、試料の測定時間などの条件を決めます。長時間のばく露を評価する場合と、短時間に高濃度のばく露が生じる可能性を評価する場合では、測定方法や評価基準が異なるため注意しましょう。

③個人サンプラーを装着して測定する

測定時は、労働者の呼吸域に個人サンプラーの採取口などを装着し、通常の作業を行いながら空気中の化学物質を採取します。

個人サンプラーには、ポンプで空気を吸引するアクティブサンプラーや、自然拡散を利用するパッシブサンプラーなどがあり、対象物質や測定目的に応じて適切な方法を選択します。測定中の作業内容や作業時間、異常現象なども記録しておきましょう。

【引用】化学物質の個人ばく露測定のガイドライン

【引用】化学物質の個人ばく露測定のガイドライン

④試料を分析し、測定結果を評価する

採取した試料を分析して、労働者のばく露濃度を算出します。測定目的に応じて、8時間の時間加重平均値や短時間のばく露濃度などを求め、濃度基準値やばく露限界値等と比較して評価します。濃度基準値についての告示はこちらよりご確認ください。

2026年10月以降、法令上の対象となる個人ばく露測定については、デザイン・サンプリングや分析を、所定の要件を満たす作業環境測定士や作業環境測定機関等に実施させます。

⑤必要に応じて対策を見直す

測定の結果、ばく露をさらに低減すべきと判断された場合は、局所排気装置などの設備改善、作業方法の変更、使用量の削減、保護具の見直しなどを検討します。

対策を実施した後は、その効果を確認し、必要に応じて再評価・再測定を行うことも重要です。個人ばく露測定は、測定して終わりではなく、結果をリスク低減措置につなげるところまでが一連の流れといえます。

測定後に必要な対応

個人ばく露測定は、結果を確認して終わりではありません。測定結果をもとに現在の管理方法が適切かを確認し、必要に応じてリスク低減措置やリスクアセスメントを見直します。

①測定結果を評価する

まず、測定したばく露濃度を濃度基準値やばく露限界値等と比較し、労働者のばく露状況を評価します。

濃度基準値を超えていないか、現在の対策で十分にばく露を低減できているかを確認し、追加の対策すべきかを判断します。

②必要なリスク低減措置を実施する

測定結果から、ばく露をさらに低減すべきと判断された場合は、設備や作業方法などの見直しを行います。

例えば、局所排気装置や換気設備の改善、発散源の密閉化、作業方法・使用量・作業時間の見直しなどが考えられます。これらの対策を講じても十分にばく露を低減できない場合などは、適切な呼吸用保護具の選定・使用も検討します。

③リスクアセスメントを見直す

測定によって得られたばく露濃度や、実施したリスク低減措置をリスクアセスメントに反映します。

作業方法や使用量、設備などを変更した場合には、変更後の条件でリスクを再評価し、必要に応じて追加の対策や再測定を行います。

④結果や対応内容を周知・記録する

測定結果やリスクアセスメントの結果、実施したリスク低減措置については、関係する労働者が内容を理解できるよう適切に周知しなければなりません。

また、測定結果や評価結果、実施した対策などは、法令で定められた事項・保存期間に従って記録・保存します。保存期間は対象物質や測定の種類によって異なるため、注意しましょう。


このように、個人ばく露測定は、ばく露状況を把握するだけでなく、「測定 → 評価 → 対策 → 再評価」を繰り返し、化学物質管理の継続的な改善につなげていくことが求められます。


企業が準備すべきこと

個人ばく露測定への対応では、測定そのものだけでなく、対象作業の把握から測定後の改善までを一連の流れとして管理できる体制を整えておきます。

企業は2026年10月の施行に向けて、個人ばく露測定の実施から測定結果を踏まえた設備の改善や作業方法の見直し、適切な保護具の選定、対策後の再評価までを一連の流れで実施できる社内体制を整えておきましょう。

実務対応にあたっては、厚生労働省の「化学物質による健康障害防止のための濃度の基準の適用等に関する技術上の指針」や、作業環境測定基準、日本産業衛生学会の「個人ばく露測定ガイドライン」などを確認しておくとよいでしょう。


法令違反にも注意が必要

2026年10月施行の改正では、労働安全衛生法第65条の3第1項に基づき作業環境測定を行わなければならない場合に、測定を実施しなかったときは、同法第119条第1号の罰則の対象となります。同条の罰則は、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。(労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律等の施行等について(個人ばく露測定等関係)

ただし、個人ばく露測定に関するすべての不備や違反に、この罰則が一律に適用されるわけではありません。関係法令を正しく確認し、法令に沿って個人ばく露測定を適切に実施しましょう。

まとめ

2026年10月1日の法改正により、個人ばく露測定が作業環境測定として明確に位置づけられ、測定精度を確保する仕組みが強化されます。

一方で、すべての化学物質取扱事業場で個人ばく露測定が一律に義務化されるわけではありません。まずは、自社で取り扱う化学物質や作業内容、リスクアセスメント・作業環境測定の結果を確認し、測定が必要となる作業を把握することが重要です。

個人ばく露測定を「測って終わり」にせず、測定結果を設備改善や作業方法、保護具の選定、リスクアセスメントの見直しにつなげ、継続的な化学物質管理に活用していきましょう。

そして今から、2026年10月の施行前に、自社で取り扱う化学物質や対象作業、現在の測定・管理体制を整理し、必要に応じて専門家や作業環境測定機関に相談できる体制を準備しておきましょう。

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執筆者 スマートSDSメディア編集部
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