更新:2026.07.29スマートSDSメディア編集部

化学物質による健康障害を防止するために定められている法令の一つが、今回ご紹介する「特定化学物質障害予防規則(以下、「特化則」)」です。
特化則は、発がん性など重大な健康影響を及ぼすおそれのある特定化学物質を対象としており、事業者に対して、作業管理やばく露防止対策、作業主任者の選任など、さまざまな対応を求 めています。
一方で、対象物質の範囲や具体的な義務内容、作業主任者の役割などは複雑であり、有機溶剤中毒予防規則(以下、「有機則」)との違いが分かりにくいといった声も少なくありません。特化則への対応を適切に行うためには、制度全体の仕組みを整理し、それぞれの義務や対策内容を正しく理解しなければなりません。
本記事では、特化則の、対象物質、作業主任者、健康診断、作業環境測定、ばく露防止対策、掲示事項など、実務上押さえておくべきポイントなどを分かりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。
特化則について解説する前に、ま ずは特化則と有機則が労働安全衛生法の体系の中でどのような位置づけにあるのかを確認します。
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【引用】労働基準監督署:有機溶剤中毒予防規則 特定化学物質障害予防規則 等 についてを元に筆者が作成
特化則は、昭和47年(1972年)9月18日に、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)及び労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)の規定に基づいて定められています。
一方で有機則は、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)及び労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)の規定に基づいて定められています。
特化則と有機則はどちらも、労働安全衛生法を根拠として定められた特別規則です。
労働安全衛生法では、化学物質による健康障害の発生リスクを低減するため、事業者が実施すべき管理措置を定めています。
特化則や有機則は、その中でも特に健康への影響が懸念される化学物質を対象とし、取り扱い時の管理方法や作業上の義務を具体的に規定しています。
また、これらの規則で対象となる物質は、以下のようにリスクアセスメント対象物にも該当します。
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【引用】有機溶剤中毒予防規則 特定化学物質障害予防規則 等 についてを参考に筆者が作成
そのため、特別規則に基づく措置を講じることはもちろん、リスクアセスメントの実施およびその結果に応じた措置についても適切に対応しなければなりません。
事業者が化学物質による労働者のがん、皮膚炎、神経障害などの健康障害を予防するために定めた規則を、特定化学物質障害予防規則といいます。
対象物質を取り扱う際は、特化則で定められた措置を実施するとともに、労働者の危険防止の趣旨に反しない範囲で、化学物質にばく露される労働者の人数や、ばく露される期間・程度をできる限り最小限に抑えるよう努めます。
そのためには、まず取り扱っている物質がどの対象物質に該当するのかを確認し、必要となる措置を整理したうえで、適切に対応していくことが求められます。
特化則には大きく分けて「第一類特定化学物質」「第二類特定化学物質」「第三類特定化学物質」の3種類があります。
対象物質数は計75物質あり、労働安全衛生法施行令 別表第三に記載されています。(2026年6月現在)
なお、第一類物質に該当するベンゾトリクロリド以外の物質を重量の1%を超えて含有する製剤やその他の物、または第一類物質に該当するベンゾトリクロリドを重量の0.5%を超えて含有する製剤やその他の 物(合金の場合は、ベリリウムを重量の3%を超えて含有するものに限る。)も対象となります。
また、第二類物質または第三類物質を含有する製剤その他の物のうち、厚生労働省令で定めるものについても対象に含まれます。
第一類特定化学物質とは、発がん性その他の重篤な健康障害を引き起こすおそれが高い物質として指定された物質をいいます。製造に厚生労働大臣の許可が必要とされており(労働安全衛生法 第56条)、許可なく製造することは禁止されています。密閉式設備の設置、特定化学物質作業主任者の選任、特殊健康診断の実施など、他の類と比べて特に厳しい管理措置が義務付けられています。
なお、同名称の『第一種特定化学物質』は化学物質審査規制法でも用いられていますが、定義・対象が異なるため注意しましょう。
製造には厚生労働大臣の許可が必要で、密閉設備、局所排気装置等の設置などが定められています。
ジクロルベンジジン及びその塩や、アルフア-ナフチルアミン及びその 塩、塩素化ビフエニル(別名PCB)、さらにそれらの物質をその重量の1%を超えて含有したもの等
第二類特定化学物質とは、発がん性その他の慢性・遅発性の健康障害を引き起こすおそれがある物質として指定された物質をいいます。第一類ほど製造許可等の厳しい制限はありませんが、設備・換気・健康診断等の義務が課されています。
さらに第二類特定化学物質は、特定第二類物質・特別有機溶剤等・オーラミン等・管理第二類物質といった区分に細分化されます。それぞれに応じた管理措置が定められていますので、対象物質と合わせてご覧ください。
①特定第二類物質を製造する設備については、密閉式の構造のものとしなければならない。
②特定化学設備のうち特定第二類物質が接触する部分については、著しい腐食による当該物質の漏えいを防止するため、当該物質の種類、温度、濃度等に応じ、腐食しにくい材料で造り、内張りを施す等の措置を講じなければならない。
③特定第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんが発散する屋内作業場を取り扱うとき、発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。
塩化ビニルや、ベンゼン、硫化水素、さらにそれらの物質をその重量の1%もしくは5%を超えて含有したもの等
①特別有機溶剤等を屋内に貯蔵するときは、その貯蔵場所に、次の設備を設けなければならない。
②労働者が特別有機溶剤等により著しく汚染され、又はこれを多量に吸入したときは、速やかに、当該労働者に医師による診察又は処置を受けさせなければならない。なお、速やかに医師による診察又は処置を受ける必要がある旨を事前に周知させる必要もある。
エチルベンゼンや、クロロホルム、スチレン、テトラクロロエチレン、さらにそれらの物質をその重量の1%を超えて含有したもの等
①オーラミン等を製造する設備については、密閉式の構造のものとしなければならない。
②オーラミン等を製造または取り扱う作業場および、特定化学設備を設置する屋内作業場の床を、不浸透性の材料で造らなければならない。
オーラミン、マゼンタ、さらにそれらの物質をその重量の1%を超えて含有したもの等
①管理第二類物質のガス、蒸気もしくは粉じんが発散する屋内作業場については、当該特定第二類物質若しくは管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。
②事業者は、前項ただし書の規定により特定第二類物質若しくは管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けない場合には、全体換気装置を設け、又は当該特定第二類物質若しくは管理第二類物質を湿潤な状態にする等労働者の健康障害を予防するため必要な措置を講じなければならない。
シアン化カリウムや、マンガン及びその化合物、溶接ヒューム、さらにそれらの物質をその重量の1%もしくは5%を超えて含有したもの等
第三類特定化学物質とは、大量に漏洩した場合などに、急性中毒を引き起こすおそれのある物質をいいます。
これら の物質は、漏洩時に短時間で急性中毒などの重大な健康障害を引き起こすおそれがあるため、発散防止や設備の密閉、換気の確保、保護具の備え付け、緊急時の措置など、事故を想定した管理体制の整備が重視されています。
つまり、慢性的な健康影響への対策を重視する第一類・第二類とは異なり、第三類では「漏らさないこと」と「漏れたときに即座に対応できること」が大きなポイントになっているのが特徴です。
①第三類物質(以下この章において「第三類物質等」という。)が接触する部分については、著しい腐食による当該物質の漏えいを防止するため、当該物質の種類、温度、濃度等に応じ、腐食しにくい材料で造り、内張りを施す等の措置を講じなければならない。
②事業者は、特定化学設備のふた板・バルブ等の接合部や、これらを操作するためのスイッチ・押しボタン等については、当該接合部から第三類物質等が漏えいすることを防止するため、ガスケットを使用し、接合面を相互に密接させる等の措置を講じなければならない。
③第三類物質等の漏洩を防止するため、見やすい位置に、当該原材料その他の物の種類、当該送給の対象となる設備その他必要な事項を表示しなければならない。
④当該特定化学設備から第三類物質等が漏洩した場合に、容易に地上の安全な場所に避難することができる二以上の出入口を設けなければなら ない。
⑤事業者は、特定化学設備のうち発熱反応が行われる反応槽等で、異常化学反応等の発生を早期に把握するために必要な温度計、流量計、圧力計等の計測装置を設けなければならない。
⑥事業者は、特定化学設備を設置する作業場又は特定化学設備を設置する作業場以外の作業場で、第三類物質等を合計100リットル以上取り扱うものには、第三類物質等が漏えいした場合に関係者にこれを速やかに知らせるための警報用の器具その他の設備を備えなければならない。
アンモニアや、一酸化炭素、塩化水素、硝酸、さらにそれらの物質を含有する製剤、厚生労働省令で定めるもの等
物質名だけでは用途が分かりにくいこともあるため、身近な例を紹介していきます。
例えば第二類物質には、ドライクリーニングの洗浄液として知られるテトラクロロエチレンや、塩ビパイプの原料である塩化ビニルなどが該当します。
さらに、より生活に近い例としては、農作物の肥料などにも使用されるアンモニアが第三類物質に分類されています。
また、金属アーク溶接や溶断、ガウジング作業に携わる方にとって身近な溶接ヒューム(作業時に発生す る微細な金属粒子を含む煙)も、第二類物質に分類されています。
ガウジング作業
溶接の不良や欠陥が生じた部分を取り除くために、アークで溶かした金属に圧縮空気を送って吹き飛ばし、金属の表面に溝をつける作業
このように、丈夫な素材や優れた性能など、私たちの生活や産業を支える重要な役割を担う物質である一方で、取り扱い方法を誤れば健康被害につながるおそれがあります。ただし、製品として適切に管理・流通され、通常の使用方法を守る限りにおいては、過度に不安を抱く必要はありません。
名称を知っている身近な物質であっても、その危険有害性を正しく理解し、推奨される用途に応じた適切な取扱いを徹底しましょう。
続いて、特化則該当物質による健康障害の予防措置やばく露リスク低減措置を行う作業主任者について説明します。
労働安全 衛生法第14条では、労働災害を防止するため、一定の危険・有害業務については、その作業の区分に応じた作業主任者を選任することが事業者に義務付けられています。
作業主任者は、事業者が当該免許または技能講習修了資格を有する者の中から選任しなければなりません。
なお、特定化学物質作業主任者は以下のように、特化則の対象物質に係る作業であっても、選任される作業主任者の資格が必ずしも「特定化学物質作業主任者技能講習」に限られるわけではありません。
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【引用】労働基準監督署:有機溶剤中毒予防規則 特定化学物質障害予防規則 等 についてをもとに筆者が作成
詳しくは、労働安全衛生法施行令第6条で、作業主任者を選任しなければならない作業ごとに必要な免許または講習が定められていますので、ご参照ください。(表は一部抜粋したものになります。)
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【引用】職場のあんぜんサイト:作業主任者をもとに筆者が作成
さらに作業主任者を選任した場合は、当該作業主任者の氏名およびその者に行わせる職務内容について、作業場の見やすい箇所に掲示し、関係労働者へ周知しなければなりません。
掲示に限らず、腕章や、特別な帽子の着用によって、誰が作業主任者であるかを明確にする措置も含まれています。
また、交替制作業における作業主任者は、原則として各勤務時間のチームごとに選任します。これは、作業主任者が現場で労働者を直接指揮・監督する立場にあるためです。
ただ し例外として、ボイラー取扱作業主任者、第一種圧力容器取扱作業主任者(※化学設備に係るものを除く)および乾燥設備作業主任者については、必ずしも各直ごとに選任する必要はないとされています。
なお、同一の場所で当該作業に係る作業主任者を2人以上選任した場合は、それぞれの作業主任者の職務分担を明確に定めなければなりません。
特化則に基づく作業主任者には主に「特定化学物質作業主任者」と「金属アーク溶接等作業主任者」があります。
それぞれの選任が必要となる作業や、作業主任者の選任基準および職務について解説していきます。
特化則に基づく作業主任者一定の有害化学物質や四アルキル鉛を含有する物を製造または取り扱う作業を行う事業者が、対象となります。
事業者は、特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習を修了した者のうちから、特定化学物質作業主任者を選任しなければなりません。
(特化則:第二十七条の二より)
金属をアーク溶接する作業や、アークを用いて金属を溶断またはガウジングする作業、溶接ヒュームを発生させる金属アーク溶接等作業を行う事業者が対象となります。
事業者は、講習科目を金属アーク溶接等作業に係るものに限定した特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習を修了した者のうちから、金属アーク溶接等作業主任者を選任することができる。
(特化則:第二十八条の二より)
このように、作業の内容によって、作業主任者の種類や必要となる講習は大きく異なります。
作業主任者は責任をもって作業を管理するとともに、現場で働く労働者一人ひとりがその指示に従い、安全確保に努めていきましょう。
該当物質が特定できたら、次に適切なばく露防止措置を講じる必要があります。
ばく露防止対策とは、ばく露リスクを低減するために行う以下のような対策のことを言います。
作業環境測定やリスクアセスメントの結果、管理濃度や濃度基準値を超えるおそれがある場合、またはリスクが許容できない水準と判断された場合には、ばく露低減措置を講じなければなりません。
本章では、作業者が行うばく露防止対策のうち、換気装置や保護具の使用など、日常的な対策についてご紹介します。
換気装置の選定については、対象物質の章でも述べたとおり、取り扱う物質ごとに適したものが異なります。適切に選定されていない場合、十分な効果が得られない可能性があるので注意しましょう。
また、換気装置には届出や定期的な点検といった管理上の義務もあります。これらの詳細については以下にまとめていますので、対象に応じた換気装置を選定し、定期的な管理を行いましょう。
労働安全衛生法では、事業者は局所排気装置を 設置・移転・変更しようとする場合には、その計画を、工事開始日の30日前までに所轄の労働基準監督署長へ届け出をすることが原則義務付けられています。
特化則では、月1回の点検を実施し初回使用時や分解・改造時にも点検する必要があると定められています。さらに、1年以内ごとに1回定期自主検査を行い、その記録を3年間保存することが義務づけられています。
詳しくは、別記事「局所排気装置とは?種類から点検・届出義務まで、関連法令とともに徹底解説」にまとめてありますので、ご覧ください。
一般的に保護具の選定は作業環境や作業頻度によって異なるため、保護具の材料や耐透過性クラスを一律に指定することは難しいとされています。
労働安全衛生規則の【第二章 保護具等】では、呼吸用保護具については、ガス・蒸気・粉じんの吸入による健康障害を防止するため、 作業場に必要な保護具を備え付けることが義務付けられています。加えて、皮膚障害や経皮吸収による健康障害のおそれがある物質を取り扱う作業では、不浸透性の保護衣、保護手袋、保護長靴、塗布剤、保護眼鏡などの保護具を使用させる必要があります。これらの作業を請負人に行わせる場合には、保護具の使用が必要であることを周知することが求められています。そして労働者自身にも、事業者から使用を指示された保護具を確実に使用する義務があります。
また、特化則の【第七章】では、特定化学物質を取り扱う作業における健康障害防止のため、事業者に対して必要な保護具の備え付けおよび使用管理について定められています。
さらに2024年4月の労働安全衛生規則の改正により、ある条件を満たす事業場に対して保護具着用管理責任者の選任が義務付けられる形となりました。詳細は、別記事「【選任義務化】保護具着用管理責任者とは? 講習や資格、選任要件についてわかりやすく解説!」にありますので、ご参照ください。
ここまで、対象物質によるリスクやばく露防止対策について確認してきました。
しかし、対策を実施するだけでは十分ではなく、その対策によって実際にリスクが低減できているかを確認し、必要に応じて見直しを行うことが大切です。
その方法の一つとして「作業環境測定」があります。
作業現場には、有機溶剤や鉛、特定化学物質などの有害な化学物質のほか、粉じん、電離放射線、有害光線、騒音、振動、高温・低温、高湿度といったさまざまな有害因子が存在することがあります。
これらの因子による健康障害を防ぐためには、まず有害因子を取り除くこと、あるいは一定の基準以下まで低減させることが基本です。それでも十分にばく露を抑えられない場合には、保護具や保護衣を使用するなど、個人レベルでのばく露防止対策も講じる必要があります。
このような作業環境管理を適切に行うためには、作業環境中にどの程度の有害因子が存在し、労働者がどの程度ばく露しているのかを把握しなければなりません。この実態を把握するために行うのが、作業環境測定です。
作業環境測定とは、作業環境の実態を把握するために空気環境その他の作業環境について行う、デザイン(測定計画の立案)、サンプリング(試料採取)および分析(濃度の測定・評価)のことを指します。(労働安全衛生法第2条より)
特化則では、特定化学物質を製造、取扱う屋内作業場の環境測定は6カ月以内ごとに1回行う。そして、作業環境測定結果は3年間保存し、特定の物質については30年間の保存が求められます。
なお、作業環境測定の具体的な測定方法については、作業環境測定基準に物質ごとに定められています。詳細はそちらをご覧ください。
続いて、作業による身体へのばく露の影響を確認し、リスク低減対策が適切に機能しているかを確認する方法として、健康診断があります。
まず、労働安全衛生法にある健康診断についての内容を確認していきましょう。
【安衛法第66条第2項・前段】現在有害な業務に従事している労働者に実施するもの (雇入れの際、当該業務への配置換えの際、その後以下のカッコ内の期間以内ごとに1回) • 安衛令第22条第1項 第3号
【安衛法第66条第2項・後段】有害な業務に従事させたことがある労働者に実施するもの • 安衛令第22条第2項
つまり、現在当該業務に従事している労働者に加え、過去に当該業務に従事していた労働者についても、健康診断を実施しなければなりません。
続いて、特化則における健康診断の内容は以下の通りです。
事業者は、労働安全衛生法施行令第22条第1項第3号に定める業務に常時従事する労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。
健康診断は、労働者を雇い入れたときや当該業務へ配置替えを行ったとき、さらにその後も6か月または1年以内ごとに1回定期的に実施する必要があります。この期間は、取り扱う物質などによって変わります。なお、石綿の取扱い業務など一部の物質については、別表第三で定められるとおり例外的な取り扱いがあります。(特化則:第六章 健康診断より)
また、健康診断結果は、特定化学物質健康診断個人票(様式第二号)を作成し、これを5年間保存しなければなりません。
さらに事業者は、特定化学物質健康診断個人票のうち、特別管理物質(がんその他の重篤な健康障害を引き起こすおそれのある物質として特化則別表第一に掲げられた特定化学物質)を製造または取り扱う業務に常時従事している労働者、または過去に従事していた労働者に係るものの健康診断結果は、30年間保存しなければなりません。(クロム酸等を取り扱う業務については、鉱石からクロム酸等を製造する事業場において当該物質を取り扱う業務に限られます。)(特化則:第六章 健康診断より)
いずれも、健康診断結果の所轄労働基準監督署長への報告や、緊急診断の実施、一定の条件のもとで医師からの意見聴取を省略できる場合があります。
ただし、報告が必要となる事項や対応方法にはそれぞれ違いがあるため、混同しないよう各規定の内容を確認しておくことが大切です。
最後に、これまで実施してきた対策は、作業主任者だけが担うものではありません。作業者を含めた現場全体で理解し、取り組むことで、初めて効果的な化学物質管理につながります。
当該物質を製造または取り扱う作業場では、法定事項などの以下の情報を見やすい場所に掲示します。労働者以外の者も含めて見やすい箇所への掲示が必須です。
これらの情報は、SDSにも記載されている内容です。
以上の内容が書いてある項目については以下にまとめましたので、参考にしてみてください。
1項:製品及び会社情報(推奨用途及び使用上の制限を含む)
2項:危険有害性の要約
3項:組成及び成分情報
4項:応急措置
7項:取扱い及び保管上の注意
8項:ばく露防止及び保護措置
15項:適用法令
特化則は、化学物質による健康障害を防止するために定められた重要な規則です。
対象となる特定化学物質には、発がん性をはじめとした重篤な健康影響を及ぼすおそれのある物質が含まれており、取り扱いには十分な管理が必要です。
特定化学物質によるリスクを低減するためには、まず取り扱う物質が対象物質に該当するかを確認することが第一歩となります。そのうえで、作業主任者の選任、ばく露防止対策の実施、作業環境測定や健康診断による効果の確認など、段階的な管理を行うことが求められます。
また、これらの対策を確実に実施するためには、作業者への情報共有も欠かせません。掲示による周知などを通じて、作業主任者だけでなく、作業に関わるすべての方がリスクを理解し、安全意識を高めていかなければなりません。
適切なリスクアセスメントやばく露防止対策を行うためには、正確なSDSの整備と、それに基づいた管理体 制の構築が不可欠です。自社の取り扱う物質や作業内容に応じた対策を継続的に実施し、化学物質による健康障害の防止につなげていきましょう。