リスクアセスメント

量-影響関係、量-反応関係とは?化学物質管理の基本となる考え方について、違いなどをわかりやすく解説

更新:2025.03.06
スマートSDSメディア編集部
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化学物質の有害性を調べる際の基本となる指標として量-影響関係および量-反応関係があります。

この二つの関係はばく露限界値や濃度基準値などが決定される際の元となる重要な指標です。本記事では量-影響関係と量-反応関係についておよび、それらがどのように化学物質管理に生かされているのかについて解説します。

量-影響関係とは

量-影響関係とはばく露量とそれによって生物に生じる影響との関係のことです。本来は化学物質以外(放射線や薬品等)にも用いる言葉ですが、今回は化学物質のばく露について扱います。

化学物質が生物に及ぼす影響はその物質に対してどれだけばく露したかによって異なります。ばく露量が増加することによって、化学物質の生物に対する影響は強まったり、別の影響を生じさせたりします。

化学物質のばく露量と、生物にどのような影響を及ぼすかの関係を量-影響関係と言います。

以下に例として硫化水素の空気中の濃度による量-影響反応を示します。

濃度(ppm)

影響

0.03

「卵の腐った匂い」を感じる

5.0

不快臭

50~100

気道刺激

100~200

嗅覚麻痺

200~300

1時間で亜急性麻痺

600

1時間で致命的麻痺

1000~2000

即死

【参考】厚生労働省:化学物質管理者テキスト

量-反応関係とは

生物が化学物質にばく露した際に、ばく露した集団においてある特定の影響が現れる個体の割合と、ばく露量との関係を量-反応関係と言います。

量-影響反応と量-反応関係の違いとしては、量-影響関係では、ばく露量と生物に生じるさまざまな影響に注目していた一方、量-反応関係ではそうした影響のうちある一つの影響に特定して着目します。

一般的にばく露量が増えると影響が見られるようになる個体の割合が増加し、最終的に下図のようなS字曲線を描くことが知られています。

量-反応関係 SDS字カーブグラフ

【引用】ケミサポ:働く人の化学物質管理ABC

閾値とは

上の図では横軸に閾値と呼ばれる数値が見られます。

閾値は一般的に反応するかしないかの境目となる値のことで、化学物質に関してはある影響が起こるか起こらないかの境目を指します。

今回の場合では縦軸に「動物が死ぬ割合(%)」をとっているため、ばく露する集団内のどの動物も死なない最大のばく露量が閾値に該当します。

LD50とは

LD50という値も見られます。

LD50は半数致死量(Lethal Dose 50%)のことであり、ばく露する集団内の動物のうち50%が死ぬばく露量のことを指します。なお、濃度を基準とする場合にはLC50(Lethal Concentration 50%)を使用します。

LD50およびLC50は急性毒性の区分を決定する際の使用として使われるほか、毒劇法では毒物や劇物の指定に使われています。

なお、急性毒性の区分わけに関しては別記事「急性毒性とは? 混合物のGHS分類と、区分の定義や絵表示のマーク、LD50・LC50・ATEmixについても解説」を参照してください。

化学物質管理との関係

量-影響関係および量-反応関係は化学物質の有害性の特定に役立てられており、ばく露限界値や濃度基準値などはこれらを元に導かれています。

具体的には、量-影響関係をもとにある化学物質に関して人体に有害な影響を導き出し、それぞれの影響に関して量-反応関係を求めます。この場合、閾値を超えないばく露量では対象とした影響は発生しないはずなので、この値を元にばく露限界値および濃度基準値を設定すれば該当する健康障害は起こらないと考えられます。

こうした考え方が現在の化学物質管理の根幹にあるのです。

濃度基準値については「濃度基準値とは? 設定物質の一覧や、SDS・リスクアセスメントとの関係を解説」で解説しているので併せてご確認ください。

遺伝子毒性について

こうした量-影響関係および量-反応関係による有害性の分析は発がん性などの遺伝子毒性には当てはまらないとされています。

発がん性物質は遺伝子に直接作用し確率的に影響を引き起こします。そのため発がん性には量-反応関係のS字カーブが当てはまらず、ばく露量と発生率の間には単純な正比例の関係が考えられるからです。

こうした場合の安全性の指標には実質安全量VSD(Virtually safe dose)が用いられます。VSDは実際の生活における、対象となる有害性のリスクと同等であると考えられる程度のばく露量を指します。

まとめ

今回は化学物質管理の根底にある量-影響関係、量-反応関係の考え方について解説しました。

近年、化学物質管理に関する法規制が厳しくなっています。化学物質を扱う事業者は適切な知識のもと、SDSを参照して事業場の安全管理を行わなければなりません。こうした安全管理にはSDSの適切な管理が不可欠です。

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