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急性毒性とは? 混合物のGHS分類と、区分の定義や絵表示のマーク、LD50・LC50・ATEmixについても解説

更新:2025.01.26
スマートSDSメディア編集部
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GHS分類の対象となる危険有害性において、最も重要でありかつ最も判断が難しいのが急性毒性です。

混合物のGHS分類を行う際に新しい試験を行う必要はありませんが、成分個別のGHS分類結果から混合物を分類する基準は必ず知っていなければなりません。

本記事ではまず急性毒性の区分や絵表示について詳しく説明した後、実際に混合物に対して急性毒性の危険有害性を判断する手順を実例をもとに紹介していきます。

また、GHS分類なども含めた、作成に限らないSDSライフサイクル全体に生じてくる課題とその解決法についてこちらの資料にまとめています。今後の法改正を考慮した内容となっていますので併せてご利用ください。

お役立ち資料

急性毒性とは

急性毒性とは化学品への単回または短時間のばく露後に生じる健康への重篤な毒性のことです。急性毒性はGHS分類の対象となる危険有害性の一つであり、「健康に対する有害性」にあたります。

GHS分類について詳しく知りたい方は別記事「【2024年最新】GHSとは? 分類方法、区分、絵表示やSDS・ラベルとの関係について簡単にわかりやすく解説」をご覧ください。

急性毒性はそのばく露経路により経口、経皮、吸入の3つに大別されます。

急性毒性(経口)

経口は口に含んだ際の危険有害性を表します。急性毒性(経口)の試験データは大抵の場合ラットによるものであることが多いです。

急性毒性(経皮)

経皮は皮膚に付着した際の危険有害性を表します。急性毒性(経皮)の試験データは大抵の場合ラットまたはウサギによるものであることが多いです。

急性毒性(吸入)

吸入は吸い込んだ際の危険有害性を表します。急性毒性(吸入)の試験データは大抵の場合ラットによるものであることが多いです。

また、急性毒性(吸入)は吸入した物質の状態によりさらに気体、蒸気、粉塵およびミストの3つに区分されます。

急性毒性の区分

GHSにおいては、急性毒性はその毒性の程度により区分1~5に分類されます。ただし、その分類の判定基準は経口、経皮、気体、蒸気、粉塵およびミストのそれぞれのばく露経由で異なります。以下の表をご覧ください。

急性毒性区分表

区分5に関しては、全てのばく露経由に関して「それ以上の区分には該当しないが、ヒトに対する有意な毒性作用を示す信頼できるデータが得られる」場合を含みます。

また、吸入ばく露(気体、蒸気、粉塵およびミスト)のばく露時間は4時間ばく露試験に基づきます。1時間ばく露試験で求めたデータを利用する場合は、気体、蒸気の場合は基準数値を2で割り、粉塵およびミストの場合は4で割ってください。

参考:LD50・LC50とは

LD50とは半数致死量(50% Lethal Dose)の略で、投与された動物のうち50%が死亡すると考えられる動物の体重に対する投与量のことです。

例えば10mgの経口ばく露で体重500gの動物を50%死亡させる物質の場合、LD50は20(mg/kg)となり、急性毒性の区分は上記の表より区分2であるとわかります。

LD50は経口または経皮のばく露経由での急性毒性の強さを示す指標として用いられます。

また、LC50とは半数致死濃度(50% Lethal Concentration)の略で、1時間から4時間のばく露でばく露した動物のうち50%が死滅すると考えられる濃度のことです。

LC50は吸入のばく露経由での急性毒性の強さを示す指標として用いられます。

急性毒性の絵表示

急性毒性には上記の区分に応じてGHSに基づく絵表示が定められています。具体的なマークについては以下の表をご覧ください。

区分1

区分2

区分3

区分4

区分5

絵表示なし

区分ごとに絵表示が異なる点に注意してください。特に、区分5に関しては絵表示の必要はありません。

混合物のGHS分類方法

では、本項では上記の急性毒性の分類基準を混合物に当てはめていく方法を解説します。

なお、本記事では急性毒性に特化した分類方法を解説しています。GHS分類の全体的な流れについては別記事「【2024年最新】GHSとは? 分類方法、区分、絵表示やSDS・ラベルとの関係について簡単にわかりやすく解説」も合わせてご利用ください。

混合物に対する急性毒性のGHS分類は各ばく露経由ごとに以下のチャートに従います。

混合物に対する急性毒性のGHS分類チャート

1. 混合物そのものの実験データがある場合

混合物そのものの急性毒性の実験データがある場合はそちらをもとに上記の表に従って単一化学物質と同様の方法でGHS分類を行なってください。

2. 十分なデータのある類似した混合物がある場合

対象となる混合物そのものには急性毒性を決定するための試験がなされていないが、各成分および類似の製品 の有害性について十分なデータがある場合、これらのデータをつなぎの原則という規則に従って利用することができます。

混合物の類似性を評価するプロセスやつなぎの法則については別記事「つなぎの原則とは? 混合物のGHS分類に必要な原則についてわかりやすく解説」で解説していますが、この判断プロセスは混合物の組成によっては非常に複雑なものとなり専門家の判断を必要とする場合があります。したがって混合物の類似性判断の妥当性に確証が得られない場合には、以降に紹介する計算式による分類方法も視野に入れて判断を行なってください。

3. 混合物の全成分のデータを得られる場合

混合物を構成する各単一化学物質のデータが入手できる場合、それらのデータを元に混合物の急性毒性区分を計算することができます。この際、水や砂糖などの明らかに急性毒性に該当しないものは無視します。

なお、情報の入手方法としては、原料の供給先からGHS分類に対応したSDSを入手する方法や、NITE-CHRIPなどの信頼できる情報源から公開されている調査結果を入手する方法があります。

この計算式では、混合物のLD50またはLC50を求めます。また、以降は急性毒性の区分判定に用いるLD50およびLC50をまとめてATEと表します。なお、ATEとは急性毒性推定値(Acute Toxicity Estimates)を表し、ATEmixは混合物のLD50またはLC50、ATEiは成分iのLD50またはLC50を表すものとします。

混合物の急性毒性計算式

Ciは成分iの混合物中の濃度を表します。成分数がnのとき、iは1からnです。

こちらの式を利用して求めたATEmixをもとに、上記の急性毒性の区分表を参照してGHS分類を行います。

では、こちらを元に例として以下の成分Aおよび成分Bからなる混合物の急性経口毒性を計算します。

  • 成分A LD50=400mg/kg 濃度75%
  • 成分B LD50=100mg/kg 濃度25%

こちらを上記の式に当てはめるとATEmix=229となります。従ってこの混合物の急性経口毒性の危険有害性区分は区分2となります。

4. 混合物の全成分のデータを得られない場合

急性毒性について未知である成分の混合物中の濃度が10%未満の場合は、全成分が既知である場合の計算式をそのまま適応して構いません。

一方で未知の成分の濃度が10%を超える場合には以下の未知成分補正をした式を用います。

混合物の急性毒性�計算式(未知成分補正)

Cunknownは混合物中の急性毒性が未知の成分の濃度を表します。

それでは以下の成分からなる混合物の急性経口毒性を求めます。

  • 成分A LD50=120mg/kg 濃度55%
  • 成分B LD50=340mg/kg 濃度22%
  • 成分C 毒性なし 濃度12%
  • 未知成分 濃度11%

急性毒性に該当しないことが明らかである成分は無視して構いません。こちらを上記の計算式に当てはめるとATEmix=170となります。従ってこの混合物の急性経口毒性の危険有害性区分は区分3となります。

【参考】GHS国連文書第三章
    厚生労働省:GHS対応ラベルおよびSDSの作成マニュアル

まとめ

以上が急性毒性のGHS分類方法になります。GHS分類はラベル表示やSDS作成をする際に必須の作業となるので、正確にとり行うようにしてください。

ただ、GHS分類およびSDS作成業務は知識があったとしてもかなりの時間と手間がかかる作業であることも事実です。

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