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PRTRとは? PRTR法との関係や、対象物質や届出の制度についてわかりやすく解説

更新:2025.06.18スマートSDSメディア編集部

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「この工場から、どんな化学物質が環境に出ているのか?」
そんな疑問に答えるための仕組みが、PRTR制度です。

2001年にスタートしたこの制度は、国が定める特定の化学物質について、どれだけ排出され、移動したのかを事業者が報告する制度。環境への負荷を「見える化」することで、企業の透明性と住民の安心につなげる狙いがあります。

この記事では、PRTR制度の基本から、企業が実際に何をしなければならないのかをわかりやすく解説します。

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PRTRとは

PRTRはPollutant Release and Transfer Registerの略です。そのまま日本語に訳すと、「環境汚染物質の排出や移動の登録」となります。

この制度は化管法により定められており、対象となる化学物質について、環境への排出量及び、廃棄物等に含まれる移動量を、事業者が把握をして国に届け出をしなければならないという制度です。国は届けられたデータに基づき、排出量・移動量を集計して公表します。

PRTR制度に基づく届出は一年に一回、行わなければならず、国も一年ごとに集計データを公表します。PRTRの届出期間は毎年4月1日から6月30日までです。事業者はこの期間に届出を行わなければなりません。

また、届出を行う単位は個別の事業所ごと、対象となる物質ごとです。事業者全体で一つの届出を行うだけでは不十分であることに注意が必要です。対象となる事業者及び事業者や、詳細な対象物質については後述します。

なお、PRTR制度における排出量とは、大気や公共水域、土壌などへの排出や、埋立処分等を行った当該化学物質の量のことを指し、移動量とは、下水道への移動や排気等により事業所外に移動する量のことを指します。具体的な排出量、移動量の計算方法については、経済産業省が公表している「PRTR排出量等算出マニュアル」を参考にしながら算出してください。

化管法とは

化管法は、正式には「特定化学物質の環境への排出量の把握等および管理の改善の促進に関する法律」といい、PRTR制度を規定している法律です。

事業者による化学物質の自主的な管理改善の促進と、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的としており、PRTR制度SDS制度の2本の柱で成り立っています。PRTR制度は化管法の根幹をなす制度と言えるでしょう。

なお、SDS制度については今回は解説していませんが、SDSについて知りたい方は別記事「SDS(安全データシート)とは? 交付義務や作成方法、項目について簡単にわかりやすく解説!」を参考にしてください。化管法に労働安全衛生法と毒劇法を加えたいわゆる「SDS3法」に基づき記載項目や作成方法を解説しています。

PRTR法との関係

PRTR法とは、正式な名称としては存在しませんが、慣習として化管法のことを指します。したがって、PRTR法と言ったとき、それはPRTR制度そのもののことを指すわけではないようです。

なお、PRTR制度は化管法で定められているため、PRTR法で定められるPRTR制度ということになります。

PRTR制度の対象となる化学物質

化管法ではPRTR制度とSDS制度の対象になる化学物質を指定化学物質として定めています。指定化学物質には「第一種指定化学物質」と「第二種指定化学物質」がありますが、PRTR制度で届出の対象となるのは第一種指定化学物質のみです。SDS制度については第一種、第二種どちらも対象となります。

第一種指定化学物質

第一種指定化学物質は、人や環境への有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に継続して広く存在する(暴露可能性がある)と認められる物質だとされており、現在計515の物質が定められています。

なお、第一種指定化学物質のうち、発がん性の懸念が高い物質など、特に重篤な障害を もたらす物質、あるいは強い生態毒性を持ち、難分解性・高蓄積性をもち、動植物の生育に 支障を及ぼす可能性が特に高い物質については「特定第一種指定化学物質」とされており、23の物質が指定されています。

第一種指定化学物質の具体的な物質名の一覧については、以下のリンクからダウンロードが可能です。

▶︎第一種指定化学物質の一覧をPDF形式でダウンロード

▶︎第一種指定化学物質の一覧をEXCEL形式でダウンロード

【引用】経済産業省:PRTR制度対象化学物質

例外事項

先述の第一種指定化学物質に当てはまる場合であっても、以下の条件に当てはまる製品については、排出量等の把握、届け出をしなくて構いません。

  • 対象化学物質の含有量が少ないもの(第一種指定化学物質の場合は1%未満、特定第一種化学物質の場合は0.1%未満)
  • 事業者による取り扱いの過程において固体以外の状態にならず、かつ粉状または粒状にならない製品
  • 密閉された状態で使用する製品(乾電池等)
  • 一般消費者用の商品(家庭用洗剤等)
  • 再生資源(空き缶等)

PRTR制度の対象となる事業者及び事業所

PRTR制度で届け出を行わなければならない事業者及び事業所の要件は以下のとおりです。PRTR制度は事業所ごとに届け出が必要になるため、事業者の要件に該当する事業者の事業所の要件に該当する事業所が制度の対象となります。

事業場に関する要件

以下の両方に当てはまる場合PRTR制度の対象となります。

  • 政令で指定されている24の業種に該当する

事業者に関する要件です。以下の表の業種に該当する事業者はPRTR制度の対象となりえます。

PRTR制度 対象業種一覧表

【引用】nite:化管法の概要

  • 常用雇用者数が21人以上

こちらも事業者全体での規模となります。常用雇用者数とは、雇用期間を定めずに雇用されている労働者のことで、アルバイトやパートなども対象となります。具体的には、期間を定めずに雇用されている者、1か月を超える期間を定めて雇用されている者又は調査日前の2か月にそれぞれ18日以上雇用されている者のいずれかに該当する者をいう。と定められています。

以上の二つが事業者に関するPTRT制度の要件になります。上記の両方を満たしている事業者はPRTR制度の対象となり、以下の事業所に関する要件のいずれか一つに該当する場合は事業所単位で届け出を行わなければなりません。

事業所に関する要件

事業者に関する要件に該当している事業者については、以下のいずれかの要件に該当する事業所についてPRTR制度に基づく排出量・移動量の把握と、届け出を行わなければなりません。

  • 第一種指定化学物質の年間取扱量が1トン以上
  • 特定第一種指定化学物質の年間取扱量が0.5トン以上
  • 特別要件施設に該当する場合

なお、特別要件施設とは以下のような事業所のことを指します。

  • 金属鉱業又は原油及び 天然ガス鉱業を営む事業者の場合、鉱山保安法に規定する建設物、 工作物その他の施設のある事業所
  • 下水道業を営む事業者の場合、下水道終末処理施設のある事業所
  • ごみ処分業又は産業廃棄物処分業を営む事業者の場合、一般廃棄物処理施設又は産業廃棄物処理施設のある事業所
  • ダイオキシン類対策特別措置法に規定する特定施設に該当する事業所

PRTR届出事項

PRTR制度では、届出は各都道府県が受け付けます。届出を行わなければならない項目は以下のとおりです。

  • 事業者の名称
  • 法人番号
  • 事業所の名称
  • 事業所の所在地
  • 事業所において常時雇用される従業員の数
  • 事業所において行われている事業が属する業種
  • 担当者の氏名等
  • 第一種指定化学物質の名称
  • 第一種指定化学物質の管理番号
  • 大気への排出量
  • 公共水域への排出量
  • 当該事業所における土壌への排出量
  • 当該事業所における埋立処分量
  • 下水道への移動量
  • 当該事業所の外への移動量
  • 廃棄物の処理方法または種類
    PRTR届出資料1

    PRTR届出資料2

なお、こちらの提出書類は環境省のホームページからダウンロードが可能です。

PRTR届出方法

PRTR制度の届出の方法は3通りの方法があります。紙面による届出と、電子届出と、磁気ディスクによる届出の3つです。現在では、このうち電子届出が大半を占めており、磁気ディスクによる届出はほとんど見られないようです。

繰り返しになりますが、PRTRの届出は都道府県の窓口に対して行います窓口の一覧が環境省のPRTRインフォメーション広場からダウンロード可能ですので、ご利用ください。各手続きの方法について、どの窓口がどの方法に対応しているか等も確認できます。

以下、それぞれの届出方法について簡単に解説します。

紙面による届出

届出書を紙で作成し、窓口へ持参するか、郵送で届出を行います。

届出書のフォーマットについては環境省のサイトにてPDF形式およびword形式でダウンロードが可能です。こちらに書き込み提出するのが良いでしょう。

電子届出

電子届出は現在経済産業省のサイト等でも最も推奨されている方法で、大半の届出が電子届出で行われているようです。

電子届出を行う際は、「PRTR届出システム」から届出を行うこととなります。

PRTR届出システム スクリーンイメージ
PRTR届出システム

PRTR届出システムにログインするためには、まず事業者が所属する都道府県の届出書提出窓口へ「電子情報処理組織使用届出書」を提出しなければなりません。こちらを提出し受理されると、ユーザーIDと初期パスワードが記載された書面が送付されます。なお、この提出は一度提出すれば次年度以降は再提出の必要なくシステムが利用できます。

なお、電子情報処理組織使用届出書は環境省のこちらのサイトからダウンロードでき、通年で提出を受け付けています。

PRTR届出システムでは、届出の作成から都道府県への送信までをワンストップで行うことができます。詳しくは、NITEが公開している操作マニュアルをご覧ください。

磁気ディスクによる提出

届出書を電子ファイルとして作成し、それを保存した磁気ディスクおよび磁気ディスク提出票を窓口に持参または郵送する方法です。

公表データ

PRTR制度に基づき集計されたデータは経済産業省および環境省が公表しており、誰でも個別の事業所単位で指定化学物質の排出量・移動量の確認ができます。

データは経済産業省のPRTR制度集計結果の公表ページや、環境省のPRTRインフォメーション広場で確認が可能です。また、PRTR公表データの閲覧、比較やファイル出力が行えるアプリケーション「PRTRけんさくん」というシステムも存在し、経済産業省のページからダウンロード可能です。

まとめ

以上がPRTR制度の概要になります。届出を行わなければならない事業所に該当した場合、もれなく届出を行うようにしましょう。

また、PRTR制度の対象となる化学物質は、SDS制度の対象でもあります。SDSは化学物質管理の基本となる文書であり、リスクアセスメントを行う際やPRTRの届出を行う際にも不可欠でしょう。

したがって、化学品を扱う事業者は正しいSDSを適切に管理することが不可欠です。

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