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【2026年改正】労働安全衛生法第119条について:SDS関連義務に対する罰則事項を解説

更新:2025.07.30スマートSDSメディア編集部

【2026年改正】労働安全衛生法第119条について:SDS関連義務に対する罰則事項を解説の記事本文サムネイル

労働安全衛生法の第119条は労働安全衛生法に定められた義務に違反した際の罰則について定めている条項です。先日公布された「労働安全衛生法および作業環境測定法の一部を改正する法律」では、この条項について改正が行われます。SDSの取り扱いにも関連する改正であり、化学品を取り扱う事業者はこの動向をもれなく把握しておく必要があるでしょう。

本記事では、労働安全衛生法第119条について、主に化学物質管理の目線から解説します。SDSやラベルに関する罰則が絡んだテーマとなっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

労働安全衛生法第119条

労働安全衛生法では、第12章に罰則がまとめられています。第12章には第105条の3から第123条までが含まれており、第119条はここに含まれているということになります。

労働安全衛生法の本文はe-govのページから確認できます。第119条の現行の本文(2025年6月1日施行分までを含む)は以下のとおりです。

第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

一 第十四条、第二十条から第二十五条まで、第二十五条の二第一項、第三十条の三第一項若しくは第四項、第三十一条第一項、第三十一条の二、第三十三条第一項若しくは第二項、第三十四条、第三十五条、第三十八条第一項、第四十条第一項、第四十二条、第四十三条、第四十四条第六項、第四十四条の二第七項、第五十六条第三項若しくは第四項、第五十七条の四第五項、第五十七条の五第五項、第五十九条第三項、第六十一条第一項、第六十五条第一項、第六十五条の四、第六十八条、第八十九条第五項(第八十九条の二第二項において準用する場合を含む。)、第九十七条第二項、第百五条又は第百八条の二第四項の規定に違反した者

二 第四十三条の二、第五十六条第五項、第八十八条第六項、第九十八条第一項又は第九十九条第一項の規定による命令に違反した者

三 第五十七条第一項の規定による表示をせず、若しくは虚偽の表示をし、又は同条第二項の規定による文書を交付せず、若しくは虚偽の文書を交付した者

四 第六十一条第四項の規定に基づく厚生労働省令に違反した者

ここで登場している条目について簡単に解説します。

第14条は作業主任者の選任についてです。第20条から第36条までは第4章の労働者の危険または健康障害を防止するための措置に該当し、事業者や元方事業者等の講ずべき措置義務について書かれています。それ以降の第54条までが第5章の第1節である機械等に関する規制で、機械の検査等に関する規制などを記載しています。第56条はジクロルベンジジンの製造許可に関することで、57条が化学物質管理にとって重要なSDSやラベルに関することとなります。上記で挙げられているもののうち、これ以外で化学物質管理の観点から重要なのは第65条で定められる作業環境測定があります。

労働安全衛生法および作業環境測定法の一部を改正する法律

労働安全衛生法および作業環境測定法の一部を改正する法律とは、2025年5月14日に交付された最新の法令で、労働安全衛生法および作業環境測定法の一部を改正することを定めた法律となっています。この法律に基づき、労働安全衛生法の罰則規定である、第119条の改正が行われます。

第119項の改正概要

今回改正される具体的な改正内容は以下の通りです。

第百十九条中「者は」を「場合には、当該違反行為をした者は」に改め、同条第一号中「第五十九条  第三項」の下に「若しくは第四項」を加え、「第六十五条の四」を「第六十五条の三第一項、第六十五条の五」に改め、「第九十七条第二項」の下に「若しくは第三項」を加え、「者」を「とき。」に改め、  同条第二号及び第三号中「者」を「とき。」に改め、同条第四号中「者」を「とき。」に改め、同号を同条第五号とし、同条第三号の次に次の一号を加える。

四 第五十七条の二第一項の規定による通知をせず、又は虚偽の通知をしたとき。

したがって、改正後の119条の内容は以下のようになります。

第百十九条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

一 第十四条、第二十条から第二十五条まで、第二十五条の二第一項、第三十条の三第一項若しくは第四項、第三十一条第一項、第三十一条の二、第三十三条第一項若しくは第二項、第三十四条、第三十五条、第三十八条第一項、第四十条第一項、第四十二条、第四十三条、第四十四条第六項、第四十四条の二第七項、第五十六条第三項若しくは第四項、第五十七条の四第五項、第五十七条の五第五項、第五十九条第三項若しくは第四項、第六十一条第一項、第六十五条第一項、第六十五条の三第一項、第六十五条の五、第六十八条、第八十九条第五項(第八十九条の二第二項において準用する場合を含む。)、第九十七条第二項若しくは第三項、第百五条又は第百八条の二第四項の規定に違反したとき。

二 第四十三条の二、第五十六条第五項、第八十八条第六項、第九十八条第一項又は第九十九条第一項の規定による命令に違反したとき。

三 第五十七条第一項の規定による表示をせず、若しくは虚偽の表示をし、又は同条第二項の規定による文書を交付せず、若しくは虚偽の文書を交付したとき。

四 第五十七条の二第一項の規定による通知をせず、又は虚偽の通知をしたとき。

五 第六十一条第四項の規定に基づく厚生労働省令に違反したとき。

改めて改正前の条文を記載します。改正が行われたところは太字で示しています。

第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

一 第十四条、第二十条から第二十五条まで、第二十五条の二第一項、第三十条の三第一項若しくは第四項、第三十一条第一項、第三十一条の二、第三十三条第一項若しくは第二項、第三十四条、第三十五条、第三十八条第一項、第四十条第一項、第四十二条、第四十三条、第四十四条第六項、第四十四条の二第七項、第五十六条第三項若しくは第四項、第五十七条の四第五項、第五十七条の五第五項、第五十九条第三項、第六十一条第一項、第六十五条第一項、第六十五条の四、第六十八条、第八十九条第五項(第八十九条の二第二項において準用する場合を含む。)、第九十七条第二項、第百五条又は第百八条の二第四項の規定に違反した者

二 第四十三条の二、第五十六条第五項、第八十八条第六項、第九十八条第一項又は第九十九条第一項の規定による命令に違反した者

三 第五十七条第一項の規定による表示をせず、若しくは虚偽の表示をし、又は同条第二項の規定による文書を交付せず、若しくは虚偽の文書を交付した者

四 第六十一条第四項の規定に基づく厚生労働省令に違反した者

以下では、これらの具体的内容についてわかりやすく解説します。

改正の具体的内容

第59条第4項

第59条の4項は今回の改正で追加された条文です。具体的には以下のようになります。

作業従事役員等は、労働者と同一の場所において前項の業務に就くときは、同項に規定する教育を受けなければならない。

第59条は雇入れ時の教育義務を定めている条文になります。今回は作業従事役員等に対する教育について定められ、罰則も設けられたということになります。

第65条

第65条は作業環境測定に関する条文です。今回の改正では、第65条の3として「健康障害の防止のための措置等に当たって行う作業環境測定」という条項が追加されました。第65条の4が削除され、第65条の5が追加されたのはそれによって一つ分条項がずれたからです。第65条の5(現在の第65条の4)は作業時間の制限に関する条項で、この条文に変更はありません。

第97条第3項

第97条の3項は今回の改正で追加された条文です。具体的には以下のようになります。

注文者、機械等貸与者その他第一項の作業従事者に係る事業を行う者の契約の相手方は、同項の申告をしたことを理由として、当該事業を行う者に対し、取引の停止その他の不利益な取扱いをしてはならない。

なお、条文内で言及されている第1項は以下のようになっています。

作業従事者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。

第57条について

労働安全衛生法の第57条は、ラベルやSDS、リスクアセスメント等について規定された、化学物質管理において最も重要な条文です。

第57条の1にラベル表示について、第57条の2にSDSの交付について記載がされています。今までは、ラベル表示に関してのみ第119条において罰則が示されていました。今回の改正で、SDSの交付についても罰則が規定されることとなります。先述の以下の部分です。

四 第五十七条の二第一項の規定による通知をせず、又は虚偽の通知をしたとき。

条文で言及されている「第57条の2第1項」とは、通知対象物の譲渡、提供時におけるSDSの交付義務を定めた条文です。SDSの交付義務があるにもかかわらずSDSの交付を怠った場合、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金という罰則が課されるようになるということになります。

なお、今回の改正では、SDSの内容に変更が生じた場合、その内容を先方に通知することが努力義務から義務へと引き上げられました。ただし、この規定は第57条の2第2項に記載されており、第119条にはこの条項に関する記載はないため、変更の通知には罰則は課されていないということになります。しかし、罰則が課されていないだけで義務事項となっているため、変更通知を怠れば法令違反となることに変わりはありません。

施行時期

今回取り扱っている「労働安全衛生法および作業環境測定法の一部を改正する法律」は、基本的に2026年の4月1日から施行されます。しかし、いくつかの改正内容については別途施行時期が定められています。第119条は罰則規定ということもあり、複数の条文を並列して扱っているため、施行日が複雑に入り込んでいます。以下で2026年4月1日以外の施行になる部分をピックアップして解説します。

第65条に関する部分

2026年10月1日

第59条に関する部分

2027年4月1日

第57条に関する部分

交付の日から起算して5年を超えない範囲内で政令で定める日

以上の3箇所は施行日が不規則であるので注意が必要です。特に、化学物質管理と関係の深い第57条の罰則規定の施行日は「交付の日から起算して5年を超えない範囲内で政令で定める日」となっています。今後この部分に関しては追加で法令が交付されることが予想されるため、注意が必要だと言えるでしょう。

適切な法令適合を行うために

この改正によって、化学物質管理の規制はさらに強まります。JISの改訂や表示・通知対象物質の追加など、近年化学物質管理をめぐる規制は大きく変化しており、化学物質を扱う事業者にとっては大きな負担となっているでしょう。

一方で、こうした規制強化に伴って事業者を支援する動きも出ています。SDS電子化補助金はその一つで、SDS作成・管理ツールの導入に伴う費用を最大半額まで援助する補助金です。

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