自社で扱っている化学物質がSDS交付やリスクアセスメントの対象なのか迷ったことはありませんか?
労働安全衛生法にはSDS交付義務の対象となる物質が定められていますが、それに対する例外事項も存在し、判断を誤ると法令違反となってしまうケースもあります。
本記事では、SDS交付義務の例外事項の一つである「一般消費者の生活の用に供される製品」がどのような製品を指すのかについて具体例を交えつつわかりやすく解説します。
2024年4月に改正された労働安全衛生法では、SDS交付義務対象物を扱っている事業場に対して、化学物質管理者の選任と管理者によるリスクアセスメントの実施が義務付けられています。
また、該当物質を他の事業者に譲渡・提供する際のSDSの交付とラベル表示の義務も同様に定められています。
扱っている化学物質がSDS交付義務対象物かどうかは厚生労働省の「ラベル表示・SDS交付義務対象物質一覧」から確認することができます。
化学物質管理者についてはこちらの記事「【2024年選任義務化】化学物質管理者とは? 職務や資格要件、講習についてわかりやすく解説」も参考にしてください。
現状、SDS交付義務対象物質として896の物質が定められており、今後の法改正で規制対象となる物質はより拡大していくことが定められています。法改正を受けて生じてくる課題と、その解決方法について以下の資料でチェックシートにまとめていますのでぜひご利用ください。
そして、労働安全衛生法にはそれらの義務に対する例外事項がいくつか定められており、その中でも特に判断が難しいものとして「一般消費者の生活の用に供するための製品」があります。
では、「一般消費者の生活のように供するための製品」とはどのような製品を指すのでしょうか?
これに関しては厚生労働省によるQ&A(Q6-1)によると以下のものが該当します。
それでは、上記の記載をもとにさまざまな製品についてSDS交付義務の対象であるかどうか を具体例を挙げながら解説していきます。ただし、業務用であるか一般向けであるかの判断には明確な基準があるわけではありません。記事内容は参考にした上で、最終的な判断は御社のもとで慎重に行うようにしてください。
基本的には、消費者向けとして一般販売されているものは対象外となります。しかし、業務用に販売される場合は労働者にばく露する可能性があるため、対象物質を含むものには交付義務が生じると思われます。
量販店は業務用向けとして製品を販売している場合があるため、量販店側からSDSを要請された場合は交付義務が生じると考えられます。
ボルトやナット等の製品は前項に挙げた「労働者による取扱いの過程において固体以外の状態にならず、かつ、粉状または粒状にならない製品」に該当すると考えられます。したがって譲渡・提供の際SDS交付義務は発生しません。
インゴットも固体ですが、譲渡提供先の事業者で切削や研磨を行う場合は対象物質に対するSDSの交付義務が発生します。
製品が完全に密閉された状態で取り扱われる場合は前項の「表示対象物が密封された状態で取り扱われる製品」に該当しますが、譲渡・提供先にて補充などの作業で対象物に触れる危険性のある場合はSDSの交付が必要と考えられます。
食料品に関しましては、いわゆる「食品」として譲渡・提供され、それがそのまま食品として使用される場合は交付義務の対象外となります。基本的に最終製品として消費者に提供されることを主な目的とした食品は、どのような販売形態でもSDSの交付の必要はありません。ただし、その段階以前の高濃度原料を他事業者に提供する場合はSDSの交付が義務となります。
食品のSDS交付の必要性に関しては、別記事「食品を扱う場合のSDS交付の必要性について! 最新の労働安全衛生法に基づく事例を解説」で個別にまとめていますのでぜひご覧ください。
基本的には一般消費者向けの製品と考えられます。ただし、美 容室などに販売することを主な目的とした製品には対象物質を含む場合SDS交付が必要となります。
薬機法で定められた医薬部外品は、前述の通り交付義務の除外対象となっています。
製品に「医薬部外品」と「業務用」の両方が記載されている場合については、薬機法による規制が優先され、SDS交付やラベル表示義務の適用はありません。
SDS交付義務対象の物質を自社で扱っていることが判明した場合、法令適合のためすぐに対応を行うべきです。
労働安全衛生法の改正などにより対象物質は拡大しています。今後もすでに対象物質の追加が予定されているため、遺漏ないよう定期的に確認をするようにしましょう。
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