リスクアセスメント

化学防護手袋とは?義務化された内容、皮膚等障害化学物質との関係性、具体的な選び方や使用可能時間、耐透過性についてもわかりやすく解説!

更新:2026.02.19スマートSDSメディア編集部

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化学物質を取り扱う現場において、適切な保護具の使用は、ばく露防止の基本となる対策の一つです。特に、皮膚等障害化学物質を取り扱う場合には、皮膚からの吸収や接触による健康影響を防ぐため、適切な保護具の選定と管理が求められます。

令和6年に保護具着用管理責任者の選任が義務付けられたこともあり、保護具に関する管理体制の強化が進められています。その中でも化学防護手袋は、直接化学物質に触れる可能性が高い作業において、作業者を守る重要な役割を担っています。しかし、手袋にはさまざまな種類があり、物質の性状や作業内容に応じて適切に選定しなければなりません。さらに、材質ごとの耐性や使用可能時間(透過時間)を理解せずに使用すると、防護性能が十分に発揮されないおそれもあります。

本記事では、保護具の基本的な考え方から、皮膚等障害化学物質や保護具着用管理責任者の役割を整理しつつ、化学防護手袋の種類や選び方、そして使用可能時間の考え方についても分かりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。

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皮膚等障害化学物質

皮膚等障害化学物質を取り扱う作業場では、適切な保護具の着用が義務づけられています。

厚生労働省は、令和7年(2025年)10月10日付で皮膚等障害化学物質の対象物質リストを公表しており、その数は約1,230物質に及びます。対象には、リチウム、カルシウム、銀、銅など、比較的身近に使用される物質も含まれています。


皮膚等障害化学物質には、皮膚刺激性有害物質皮膚吸収性有害物質が存在します。

皮膚等障害化学物質および特別規則に基づき不浸透性の保護具等の使用が義務付けられている物質の全体像は、下図のとおり整理されています。


皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアルより

【引用】厚生労働省:皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル


皮膚刺激性有害物質

皮膚または眼に障害を与えるおそれがあることが明らかな化学物質。化学熱傷、接触性皮膚炎などの局所的影響を引き起こす。


皮膚吸収性有害物質

皮膚から吸収され、もしくは皮膚に侵入して、 健康障害のおそれがあることが明らかな化学物質。これによって、意識障害、各種臓器疾患、発がんなどの全身影響を引き起こす。


保護具着用管理責任者

さらに、令和6年(2024年)4月の労働安全衛生規則の改正により、一定の条件を満たす事業場では保護具着用管理責任者の選任が義務化されました。

リスクアセスメントの結果に基づく措置として労働者に保護具を使用させる場合には、保護具着用管理責任者を選任します。保護具着用管理責任者は、有効な保護具の選択や保守管理など、保護具に関する業務を担います。


保護具着用管理責任者の主な業務は以下の3点です。

  1. 保護具の適正な選択に関すること
  2. 労働者の保護具の適正な使用に関すること
  3. 保護具の保守管理に関すること

このように、保護具の「選ぶ・使う・維持する」という一連の管理を適切に行う体制づくりが、事業場に求められています。




詳しくは、【選任義務化】保護具着用管理責任者とは? 講習や資格、選任要件についてわかりやすく解説!で、保護具着用管理責任者の役割から選任要件、必要な講習や資格までをわかりやすく解説しています。


保護具とは

ここまで、皮膚等障害化学物質物質を取り扱う作業場で、保護具着用管理責任者によって定められた保護具を着用するという話をしてきました。

本章では、具体的にどんな種類の保護具があるか、どうやって選ぶのかを化学防護手袋を例にとって解説します。


まず、化学防護手袋の話に入る前に、そもそも保護具がなにか、というところから始めていきます。保護具は化学物質を扱う作業において、健康障害などの危険から労働者を守るために着用する装備を指します。

代表的なものには、防護服をはじめ、保護帽、保護眼鏡、安全靴などがあります。

保護具は単なる備品ではなく、ばく露防止対策の重要な柱の一つとして位置づけられています。



化学防護手袋とは

保護具の中でも、本記事では化学防護手袋について解説していきます。

化学防護手袋は、平成17年(2005年)に制定されたJIS T 8116において定められています。

保護具には、用途や作業内容に応じて使い分けるさまざまな種類があります。

皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアルより

【引用】厚生労働省:皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル


そのうち化学物質を取り扱う作業に使用する手袋を化学防護手袋といいます。

酸、アルカリ、有機薬品、その他の気体及び液体または粒子状の有害化学物質を取り扱う際に着用します。主な目的は、化学物質の浸透を防ぎ、化学物質によるばく露等の災害から守ることです。



種類

厚生労働省が公表している耐透過性能一覧表に、使用する物質ごとに保護手袋がまとめられていますので、参照ください。

耐透過性能一覧表より

【引用】厚生労働省:耐透過性能一覧表


この図から分かるように、化学防護手袋は、取り扱う物質によって適した種類が異なります。素材は大きくゴム類とプラスチック類に分類され、それぞれ特性が異なります。

次章では、ニトリルゴムとポリ塩化ビニルを例に挙げ、素材ごとの特徴を紹介します。素材によってどのような性能差があるのか、また、どのような用途に適しているのかを理解したうえで、適切な手袋を選択しましょう。



ニトリルゴムの場合

伸縮性や引き裂き強度が高いのが特徴です。

柔軟性があり、快適に作業できるため、手への負担も少ないと考えられます。

主に化学品取扱い作業や、農薬散布作業、酸取扱作業、アルカリ取扱作業等の取り扱いに使用されます。

強度に優れた素材であるため、破れや劣化によるばく露リスクの低減に貢献し、作業者の安全確保に役立ちます。

ポリ塩化ビニル

天然ゴム製の手袋に比べて油や洗剤に強く、劣化しにくい手袋です。

手になじみやすく耐摩耗性・耐水性に優れているのも特徴の一つです。

比較的丈夫な素材ですが、ニトリル製のグローブと比べて伸縮性が低いので、着脱時に破れないよう注意しましょう。


このように、素材ごとに特性が異なるため、作業内容や取り扱う化学物質も選択する際のポイントになります。

化学防護手袋の選び方

しかし、作業内容や取扱物質の種類だけで選択するのは危険です。

以下の化学防護手袋の選択方法を参考に、耐透過性クラスや作業分類も踏まえた選択をしましょう。

皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアルより

【引用】皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル


手順1(作業等の確認) 

取り扱い物質が皮膚等障害化学物質であるかの確認

  • SDS第15項の適用法令に「皮膚等障害化学物質等」と記載があるかどうかで判断できます。
  • SDS第2項の危険有害性区分に「皮膚腐食性・刺激性」「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」、「呼吸器感作性」または「皮膚感作性」のいずれかが区分1である場合は、皮膚等障害化学物質等に該当します。
  • SDS第3項の組成情報に皮膚等障害化学物質および特別規則に基づく不浸透性の保護具等の使用義務物質のリストに記載されている物質が含まれていないか照合します。


化学物質使用前に必ずSDSを確認し、該当の有無を把握しましょう。


皮膚または皮膚を介して健康への影響がある皮膚等障害化学物質かの確認

SDS第3項の組成情報にある成分の名称と皮膚等障害化学物質および特別規則に基づく不浸透性の保護具等の使用義務物質のリストを照らし合わせます。皮膚刺激性有害物質または皮膚吸収性有害物質の欄に「●」の記載がある場合、皮膚または皮膚を介して健康への影響がある皮膚等障害化学物質と判断できます。この場合、不浸透性の手袋などの保護具を着用しなければなりません。


作業内容と時間を確認

化学物質が、誰に、どのような状況で付着する可能性があるかを把握します。

以下の確認シートを参考に、使用時の状況や作業時間に関する確認項目を作成し、確認しましょう。

皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアルより

【引用】皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル


手順2(化学防護手袋のスクリーニング)

スクリーニング手順①、②に基づいて使用可能な化学防護手袋の材料を確認します。


スクリーニング手順①使用可能な耐透過性クラスの確認

取扱物質や作業内容・時間を基に使用可能な耐透過性クラスを確認します。


❶作業時間の選択

作業時間に応じて、60分以下、60分超240分以下、240分超の3つのうちいずれに該当するか確認します。※なお、作業時間は化学防護手袋を装着してから脱着するまでの時間


❷作業内容に応じた作業分類の選択

作業内容に応じて、通常時・異常時において、化学物質が皮膚へ付着する状況を考慮し、作業分類を行います。

作業分類は、以下の図にある「作業分類1(接触が大きい作業)」、「作業分類2(接触が限られている作業)」、「作業分類3(接触しないと想定される作業)」の3つです。

皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアルより

【引用】皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル



例えば、作業分類1(接触が大きい作業)にあたる手全体が化学物質に触れる作業を、260分行う場合は、耐透過性クラスは5,6であると判断できます。

なお、JIS T 8116によって定められた耐透過性クラスの詳しい分類は以下になります。

JIS T 8116より

【引用】(JIS) T 8116


ここでは、耐透過性クラスの分類ごとに細かく時間設定されているので、こちらの表も参考にクラスを評価して、耐透過性時間を共有し、それ未満に使用可能時間を抑えましょう。



スクリーニング手順②

まず、耐透過性能一覧表から、取り扱う化学物質の情報を「CAS登録番号」もしくは「物質名称」で検索します。

さらにスクリーニング手順①で確認した使用可能な耐透過性能を満たす材料を確認し、それらの材料を候補とした実際の製品を選択します。



混合物取り扱い時の対応

化学防護手袋の耐透過性能は、一般に単一物質ごとに示されています。しかし、実際の現場では複数の化学物質を含む混合物を取り扱うケースが多く、正しく選定することが求められます。

混合物を取り扱う場合は、一覧表の情報や混合物に対する耐透過試験の結果などを確認し、混合物中のすべての成分に対して、作業時間内に破過しない材料から手袋を選定します。

ただし、すべての物質に対して60分以上の耐透過性能を有する材料が存在しない場合には、対応方針を検討する必要があります。考え方の例は以下のとおりです。



例1)最も耐透過性能の高い材料を選定する方法

混合物中の皮膚等障害化学物質に該当する複数の化学物質に対して、最も良好な耐透過性能を示す材料を選択します。

使用時は、選択した手袋について、最も短い破過時間を示す物質の作業可能時間以内に交換しましょう。


例2)複数材料の手袋を重ねて使用する方法

混合物中の化学物質のいずれについても、スクリーニング手順で整理した使用可能な耐透過性能を満たすように、複数の材料を選択します。

使用時は、それらの手袋を重ねて着用し、各物質に対する防護性能を確保します。

手順3(製品の性能確認)

製品の取扱説明書にある内容を確認します。

①規格

  • 製品がJIS T 8116(化学防護手袋)またはASTM F739(アンセル化学防護手袋 透過データ)、EN ISO 374(危険な化学物質および微生物に対する防護手袋)に適合しているものかを確認する。
  • 化学防護手袋の性能に関する試験方法等を定めているものであるため、基本的にはJIS T 8116に準じている製品を使用することが望ましい。
  • 海外製品ではASTM F739に準じていることがあるが、JIS T 8116と互換性のある規格であるため、使用して問題ない。
  • EN ISO 374については、透過速度の考え方が多少異なるが、概ね同等と扱ってよい。

②材料

  • 材料がスクリーニングで絞り込んだものと一致しているかを確認する。また、厚さについても併せて確認する。
  • 製品によっては商標名で記載されているものもあるため注意する。 

③耐浸透性能

  • 耐浸透性能のクラス(クラス1〜4)を確認する。
(JIS) T 8116より

【引用】(JIS) T 8116


④耐透過性能

  • 耐透過性能のクラス(クラス1〜6)を確認する。
(JIS) T 8116より

【引用】(JIS) T 8116


  • 取り扱う化学物質の有害性や作業内容・時間を考慮し、十分な耐透過性クラスを有しているかを確認する。耐透過性能に関する情報が得られない場合は、耐透過性能一覧表のデータにより選択して差し支えない。
皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアルより

【引用】皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル



手順4(オプション:保護具メーカーへの問い合わせ)

  • より高度な管理のため、より詳細な情報を入手したい場合などについては、必要に応じて保護具メーカーに問合わせることも考えられる(必須ではない)。
  • 問合せ時、取扱物質製品のSDSとともに以下の画像にある項目等について連絡するとよい。
皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアルより

【引用】皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル


まとめ

化学物質による皮膚障害を防ぐため、適切な保護具の使用が欠かせません。特に皮膚等障害化学物質を取り扱う場合は、作業において最も重要な道具である「手」を守るため、化学防護手袋の適切な選定と管理がポイントになります。

化学防護手袋にはさまざまな種類があり、保護具着用管理責任者のもとで、取り扱う物質の性状や作業内容、作業時間に応じて適切に選定する必要があります。

保護具は「着けていれば安心」というものではありません。適切に選び、正しく使用し、管理してこそ、はじめてリスク低減につながります。化学防護手袋への理解を深め、ばく露リスクの低減と作業者の健康確保に努めましょう。



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執筆者 スマートSDSメディア編集部
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