リスクアセスメント

有機則とは?対象物質から適用除外、自律的管理との関係をまで徹底解説!

更新:2026.08.28スマートSDSメディア編集部

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塗装、洗浄、印刷、接着などの現場では、有機溶剤を含む製品を扱うことがあります。これらの有機溶剤による中毒を防ぐために定められているのが、有機溶剤中毒予防規則、いわゆる「有機則」です。

有機則に該当すると、換気設備、作業主任者、作業環境測定、健康診断、掲示、保護具などの対応が必要になります。使用量や作業条件によっては適用除外が関係する場合もありますが、除外条件は複雑で「少量だから対象外」と単純には判断できません。

本記事では、有機則の基本、対象物質の区分、適用除外の考え方、作業環境測定や健康診断などの主な対応、自律的管理との関係について解説します。ぜひ、最後までご覧ください。


有機則とは

有機溶剤中毒予防規則(以下、有機則)は、有機溶剤による労働者の中毒を防ぐための厚生労働省令です。

位置づけとしては労働安全衛生法の下位法令体系の中で、労働安全衛生法施行令(以下、安衛令)別表第6の2に掲げる有機溶剤について、具体的な管理措置を定めた省令となります。

有機溶剤中毒予防規則 特定化学物質障害予防規則 等 について を参考に筆者が作成

【出典】滋賀労働局 労働基準部 健康安全課:有機溶剤中毒予防規則 特定化学物質障害予防規則 等 について を参考に筆者が作成


有機則が定義する「有機溶剤等」

有機則では、安衛令 別表第6の2に掲げる有機溶剤と、有機溶剤とそれ以外の物との混合物で、有機溶剤を重量の5%を超えて含むものを「有機溶剤等」と定義しています。塗料、シンナー、洗浄剤などの製品でも、有機則対象の有機溶剤を合計で重量5%超含む場合は「有機溶剤等」に該当します。

なお、有機則は「有機溶剤等」を使って「有機溶剤業務」を「屋内作業場等」で行う場合に適用されます。

有機則の対象物質

第一種・第二種・第三種の区分

現在(8月27日時点)、有機則の対象となる有機溶剤は44物質です。第一種が2物質、第二種が35物質、第三種が7物質に区分されます。

このほか、2014年11月1日施行の改正で特化則へ移行した「クロロホルムほか9物質」の10物質と、有機則対象物質のみから構成される混合物1区分があります。これらを合わせると、「54物質」と「1区分」の計55物質となります。

安衛令 別表第六の二、 有機則 第1条を参考に筆者が作成

【参照】安衛令 別表第六の二有機則 第1条を参考に筆者が作成

第一種有機溶剤等

第一種有機溶剤等は、二硫化炭素と1,2-ジクロルエチレンが該当します。有機則では、第一種・第二種に係る有機溶剤業務を屋内作業場等で行う場合、密閉設備、局所排気装置、またはプッシュプル型換気装置を設けることが原則とされています。区分表示では、第一種は赤で表示します。また、適用除外の許容消費量の計算では、第一種は他の区分より有害性の高い区分になるため、少量使用の場合でも確認が必要です。  

【参照】有機則 第1条・第2条・第5条・第25条安衛令別表第六の二


第二種有機溶剤等

第二種有機溶剤等は、トルエン、キシレン、アセトン、メタノールなど、現場で使われることが多い溶剤を含む区分です。塗装、洗浄、印刷、接着、試験研究などで関係する場面が多く、有機則対応で最も確認機会の多い区分といえます。第一種と同じく、屋内作業場等で対象業務を行う場合は、密閉設備、局所排気装置、またはプッシュプル型換気装置の確認が必要です。区分表示では、第二種は黄色で表示します。  

【参照】有機則 第1条、第5条、第25条安衛令 別表第六の二


第三種有機溶剤等

第三種有機溶剤等は、第一種・第二種以外の有機溶剤等です。代表例として、ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレビン油、ミネラルスピリットがあります。第三種は、第一種・第二種とは設備規定のかかり方が異なり、タンク等の内部で行う業務などで設備の確認が問題になります。区分表示では、第三種は青で表示します。火災・爆発リスクを含め、作業場所や換気状況もあわせて確認します。  

【参照】有機則 第1条、第6条、第25条安衛令 別表第六の二


対象外物質と混合物の注意

ここで注意したいのが、対象物質に含まれない溶剤や混合物の扱いです。たとえば、エタノール単体は有機則の対象外です。ただし、有機則対象物質を含む混合物は、含まれる対象物質の合計含有率によって対象となるかを判断します。

また、クロロホルム、四塩化炭素、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、スチレン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、メチルイソブチルケトンの10物質は、2014年11月1日施行の改正で、有機則から特化則の規制対象へ移行しました。

これらは「クロロホルムほか9物質」と呼ばれ、特化則上の対象範囲に該当する場合は、特別有機溶剤等・特別管理物質として、作業環境測定記録、評価記録、健康診断個人票などの30年保存が必要になります。


有機則で必要な対応

有機則に該当する場合でも、必要な対応は一律ではありません。対象物質の区分、作業内容、作業場所、使用量、適用除外の有無によって確認すべき事項が変わります。

有機溶剤を正しく使いましょう を参考に筆者が作成

【出典】厚生労働省:有機溶剤を正しく使いましょう を参考に筆者が作成※

※資料は発行時点の制度把握用の資料です。対象物質は最新法令で確認してください。

発散源対策・換気設備

第一種・第二種有機溶剤等を扱う屋内作業場等では、原則として、発散源を密閉する設備、局所排気装置、またはプッシュプル型換気装置の設置を確認します。これは、有機溶剤の蒸気が作業場内に広がる前に抑えるための対策です。

第三種有機溶剤等では、主にタンク等の内部作業で設備が問題になります。通常の作業では全体換気装置が認められる場合がありますが、吹付け作業では、密閉設備、局所排気装置、またはプッシュプル型換気装置が必要です。

局所排気装置を使う場合は、囲い式、側方吸引型、下方吸引型、上方吸引型など、フードの型式に応じた制御風速を満たす必要があります(有機則 第5条、第6条、第16条、第18条)。

なお、局所排気装置の仕組みや点検義務については「局所排気装置とは?」で詳しく解説しています。 


作業環境測定

対象となる屋内作業場では、6か月以内ごとに1回、有機溶剤の濃度を測定し、管理区分を評価して記録を3年間保存します。第三管理区分となった場合は改善措置と再評価を行い、再評価後も第三管理区分となる場合は、作業環境管理専門家の意見聴取などの措置が必要です。対象該当性は、安衛令 第21条第10号および有機則 第28条で確認します。


有機溶剤等健康診断

屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者には、有機溶剤等健康診断を行います。第三種有機溶剤等については、タンク等の内部で行う有機溶剤業務が対象です。

実施時期は、雇入れ時、当該業務への配置替え時、その後6か月以内ごとに1回が原則です。検査項目は取り扱う有機溶剤の種類によって異なり、尿中代謝物の検査が含まれることもあります。

健康診断個人票は5年間保存します。また、健康診断の結果は労働者へ遅滞なく通知し、定期の有機溶剤等健康診断を行ったときは、所轄労働基準監督署長へ報告します(有機則 第29条、第30条)。


作業主任者の選任

有機溶剤作業主任者は、有機溶剤業務のうち、試験または研究の業務、第2条・第3条の適用除外に該当する業務を除く作業で選任が必要です。選任できるのは、有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者です。

作業主任者は、作業方法を決め、労働者を指揮し、局所排気装置・プッシュプル型換気装置・全体換気装置を1か月以内ごとに点検します。保護具の使用状況を監視することも職務です。つまり、作業主任者は「名前だけ選任する人」ではなく、有機溶剤へのばく露を抑えるために、作業方法・換気・保護具の運用を現場で確認する役割を持ちます(有機則 第19条・第19条の2)。

なお、クロロホルム等有機溶剤業務では、特化則上の特定化学物質作業主任者を選任します。この場合も、特別有機溶剤業務に係る作業では、有機溶剤作業主任者技能講習の修了者から選任します(特化則 第27条)。

掲示・区分表示・保護具

有機溶剤業務を行う作業場では、有機溶剤により生ずるおそれのある疾病の種類・症状、取扱い上の注意事項、中毒発生時の応急処置を、見やすい場所に掲示します。また、有機溶剤等の区分も表示が必要です。色分けは、第一種=赤、第二種=黄、第三種=青です。

保護具については、作業内容により送気マスク、有機ガス用防毒マスク、有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具などが対象になります。必要数を備え、常時有効かつ清潔に保持し、対象作業では労働者が使用します(有機則 第24条、第25条、第32条〜第34条)。


適用除外と許容消費量

有機則には、消費量が少ない場合などの適用除外があります。第2条と第3条では、除外される範囲が異なります(有機則 第2条、第3条)。

第2条は、一定の有機溶剤業務で消費量が許容消費量以下の場合に、設備・換気装置の性能、作業主任者、掲示、区分表示、保護具などの一部規定を適用除外とするものです。作業環境測定や健康診断は、第2条の除外対象に含まれません。

第3条は、許容消費量を常態として超えない業務について、所轄労働基準監督署長の認定を受ける場合の適用除外です。認定を受けるには、申請書に作業場の見取図を添えて提出します。

許容消費量は、有機溶剤等の区分と作業場の気積をもとに計算します。気積は床面から4mを超える高さの空間を除き、150m³を超える場合も150m³として扱います。少量使用の場合でも、対象物質、作業内容、使用量、作業場の条件を確認し、判断根拠を記録しておくことが大切です。

有機溶剤を正しく使いましょう を参考に筆者が作成

【出典】厚生労働省:有機溶剤を正しく使いましょう を参考に筆者が作成※

※資料は発行時点の制度把握用の資料です。対象物質は最新法令で確認してください。


有機則とリスクアセスメント

ここまで整理したとおり、有機則に該当する作業では、換気設備、作業環境測定、健康診断、作業主任者、掲示などの対応が必要となります。

一方で、化学物質管理はリスクアセスメントを中心とした自律的管理へ移行しており、有機則だけをケアしていればよいわけではありません。。有機則対象の成分を"基準値以下"含む製品でも、リスクアセスメント対象物質に該当する場合は、SDSをもとに有害性や作業条件を確認し、ばく露低減措置を検討・記録する義務があります。濃度基準値が定められた物質では、労働者のばく露を基準以下に管理することも法律で定められています。

つまり、有機則対応は「法令チェック」だけで終わりません。どのSDSが、どの作業・作業環境測定・リスクアセスメント結果に対応しているか分かるように管理することが重要です。スマートSDSチェックでは、SDSの更新確認、法令該当性の確認、CREATE-SIMPLE等で実施したリスクアセスメント記録との紐づけ管理を支援できます。

まとめ

有機則への対応では、対象物質の含有率だけでなく、作業内容、作業場所、使用量、設備、適用除外の条件まで確認する必要があります。

対象となるのは、安衛令 別表第六の二に掲げる有機溶剤と、有機溶剤を重量5%超含む有機溶剤含有物です。適用除外の規定もありますが、「少量使用だから対応不要」とせず、使用量、作業内容、作業場の条件を確認して判断することが大切です。

有機則対応は、SDSの最新版管理、リスクアセスメント、作業環境測定や健康診断の記録管理とつながります。まずは、自社で扱う有機溶剤含有製品のSDSと対象作業を確認してみてください。

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執筆者 スマートSDSメディア編集部
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