SDS作成

SDSの沸点について~初留点・蒸気圧・引火点との関係まで解説!~

更新:2026.03.13スマートSDSメディア編集部

SDSの沸点について~初留点・蒸気圧・引火点との関係まで解説!~の記事本文サムネイル

SDS(安全データシート)の第9項には、物質の物理的・化学的性質としてさまざまな物性値が記載されています。その中でも「沸点」はよく見かける項目ですが、実務でその意味を正確に理解している方は意外と多くありません。SDSを確認していて「沸点が書かれていないのはなぜ?」「初留点とは何のこと?」「引火点とはどう違うのか?」と疑問に感じたことはないでしょうか。

実は、沸点は単なる温度情報ではなく、物質の揮発性や蒸気の発生、作業環境や火災リスクの理解にも関係する重要な物性値です。本記事では、SDS第9項における沸点の意味や見方、さらに蒸気圧や引火点との関係について、SDS管理や作成の実務に役立つ視点で解説します。

2026/03/25 ウェビナーバナー

沸点とは

沸点とは「液体が気体になる温度」と説明されることがありますが、これはやや簡略化された言い方です。厳密には、液体の蒸気圧が外部圧力(通常は大気圧)と等しくなる温度を指します。この温度に達すると、液体の内部でも気泡が発生する「沸騰」が起こります。

沸点は、物質の揮発性を理解するための基本的な物性値の一つです。一般に沸点が低い物質は、同じ温度条件では蒸気圧が高く、比較的低温でも蒸気が発生しやすい物質です。

例えば代表的な溶剤を見てみると、次のような違いがあります。

物質

沸点

特徴

アセトン

約56℃

常温でも揮発しやすい溶剤

トルエン

約111℃

有機溶剤の中で中程度の揮発性

100℃

身近な基準物質

表からわかるとおり、沸点が低い物質は一般に蒸気になりやすく、作業環境や保管条件にも影響します。

SDSでは、この情報は第9項「物理的及び化学的性質」に記載されます。GHSでは正式に次の項目名で規定されています。

「沸点又は初留点及び沸点範囲」
(Boiling point or initial boiling point and boiling range)

つまりSDSでは、単一の沸点だけでなく「初留点」や「沸点範囲」として記載される場合があります。

SDS第9項での「沸点」の見方

SDS第9項では、必ずしも単一の沸点が書かれているとは限りません。実際のSDSでは、次のような書き方がよく見られます。

【沸点の記載例】

記載

意味

110℃

純物質など単一の沸点

30~200℃

混合物の沸点範囲

initial boiling point:35℃

初留点

該当なし/分解するため測定不可

物質の性質上測定不可

ここで重要なのが「初留点(initial boiling point)」です。

初留点とは、蒸留操作において混合物を加熱したときに、最初の留出液(蒸発した成分が冷却されて液体として取り出されたもの)が得られ始めるときの温度を指します。

例えばガソリンや灯油のような石油製品は、複数の炭化水素が混ざった混合物です。そのため単一の沸点ではなく、

・初留点(最初に蒸発する温度)
・最終沸点(最後に蒸発する温度)

といった形で沸点範囲として示されます。

また、SDS実務では次のような疑問を持つ人も多いです。

「沸点が書いていないのはミスなのでは?」

しかし、すべての物質に沸点があるわけではありません。例えば次のようなケースでは、沸点が測定できない場合があります。

【沸点が測定できない例】

分類

具体例

理由

高分子

ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC

加熱すると分解が先に起こる

高融点固体物質

シリカ(約2230℃)、炭酸カルシウム(分解)

沸点が非常に高温、SDS実務上は「測定不可」または「該当なし」と記載されることがある

分解する物質

過酸化ベンゾイル、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)

沸点に達する前に分解する

このような物質では、SDSに

・該当なし
・分解するため測定不可

と記載されることがあります。

SDSを読む際には、第9項だけを見るのではなく、第3項「組成・成分情報」と合わせて確認することが重要です。純物質なのか混合物なのかによって、沸点の意味や読み取り方が変わるためです。

沸点・蒸気圧・引火点の関係

SDS実務では、沸点だけを見ても物質の危険性は十分に理解できません。特に重要なのが、蒸気圧と引火点との関係です。

まず蒸気圧とは、ある温度で液体と蒸気が互いに行き来しながらつり合った状態(平衡状態)にあるときの、蒸気が示す圧力を指します。簡単に言えば、液体がどれだけ蒸気になりやすいかを示す指標です。

それぞれの物性値の役割を整理すると次のようになります。

項目

意味

ポイント

沸点

液体の蒸気圧が外部圧力と等しくなり、沸騰が起こる温度

揮発性の目安

蒸気圧

蒸気がどれくらい発生しやすいか

作業環境・吸入ばく露

引火点

可燃性蒸気と空気の混合気が、点火源によって瞬間的に着火できる最低の液温

火災リスク

例えばアセトンの場合を見てみます。

物性

沸点

56℃

引火点

約−20℃

蒸気圧

約30.7kPa(25℃) 水の約10倍で非常に高い

この場合、沸点は56℃ですが、引火点は−20℃と非常に低くなっています。つまり常温でも蒸気が発生しやすく、火気があれば燃焼する可能性があることがわかります。

このように、実務では

  • 吸入ばく露リスクの目安 → 蒸気圧(蒸気がどれだけ発生するかを示す指標)
  • 火災リスク → 引火点
  • 揮発性の目安 → 沸点

という形で、複数の物性値を組み合わせて理解することが重要です。

まとめ

沸点は、液体が沸騰する温度を示す基本的な物性値であり、物質の揮発性を理解するうえで重要な情報です。SDS第9項では「沸点」だけでなく、「初留点」や「沸点範囲」として記載されることがあります。

特に溶剤や石油製品などの混合物では、単一の沸点ではなく沸点範囲で示されることが一般的です。また、固体や分解する物質では「該当なし」や「分解するため測定不可」と記載される場合もあります。

SDS管理や作成の実務では、沸点の数値だけを見るのではなく、次の物性値なども合わせて確認することが重要です。

  • 蒸気圧(蒸気の発生しやすさを示す圧力指標)
  • 引火点(火災リスク)
  • 組成情報(混合物か純物質か)

これらを組み合わせて確認することで、作業環境リスクや火災リスクをより正確に理解することができるのです。

お問い合わせフォーム
スマートSDSメイク オンラインデモCTA画像
執筆者「スマートSDSメディア編集部」紹介アイコン
執筆者 スマートSDSメディア編集部
スマートSDS JournalはSDS作成・管理クラウド「スマートSDS」が運営するメディアです。SDSに関する法改正やお役立ち情報を発信しています。
2026/03/25 ウェビナーバナー
スマートSDSメイク オンラインデモCTA画像
新着記事
New Articles
オンラインデモを体験