リスクアセスメント

がん原性物質とがん原性指針対象物質について 一覧や作業記録、健康診断との関係を解説!

更新:2026.02.10スマートSDSメディア編集部

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健康に対する危険性を有する化学物質を使用する業務に携わっている方であれば、「がん原性物質」や「がん原性指針対象物質」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

がん原性物質とは、ヒトに対する発がん性が認められた物質で、厚生労働省によって公的に該当物質が定められています。発がん性を有する物質すべてががん原性物質に該当するわけではありませんが、これらはいずれも発がんの危険性を示す概念であり、密接に関係しています。

本記事では、がん原性物質およびがん原性指針対象物質と、GHSに基づく発がん性区分との関係性を整理するとともに、それぞれに対して事業者が実施すべき対応や、混同されやすい両者の具体的な違いについて詳しく解説します。ぜひ、最後までご覧ください。

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がん原性とがん原性指針対象物質の違い

がん原性物質とは

がん原性物質とは、厚生労働省の告示で厚生労働大臣が「がん原性がある物質」として指定した物質です。

ヒトに対してがん原性のある物質のことを指し、具体的には、ウレタン(CAS番号:51-79-6)や結晶質シリカ、鉛及びその無機化合物である炭酸鉛(CAS番号:598-63-0)などが該当します。

2022年(令和4年)5⽉に公布された「労働安全衛⽣規則等の⼀部を改正する省令」によって定められた「労働安全衛⽣法」に基づく新たな化学物質管理の⼀環として、事業者は、厚⽣労働⼤⾂が定める「がん原性物質」について、これら物質を製造し、または取り扱う業務に従事する労働者の作業記録等を30年間保存することが義務付けられました。そこで、新たに2023年(令和5年)4月1日から適用されるがん原性物質が約120物質定められました。その後は、2024年(令和6年)4月1日から適用の約80物質が追加され、現在では約200物質にも及びます。今後、SDS交付義務対象物質の増加に伴い、がん原性物質もさらに増加していく可能性があります。

また、がん原性は、リスクアセスメント義務対象のもので、国の有害性分類において「発がん性区分1(1A・1B)」に該当します。ただし、発がん性区分1に該当する全ての物質が、がん原性と指定されているわけではないのでご注意ください。

がん原性指針対象物質とは

がん原性指針対象物質とは、労働安全衛生法第 28 条第3項の規定に基づき、厚生労働大臣によって、「がん原性に係る指針対象物質」として公表されている物質です。

動物実験で発がん性が確認され、ヒトに対するがん原性の可能性を否定できない物質のことを指し、具体的には、クロロホルム(CAS番号:67-66-3)や酢酸ビニル(CAS番号:108-05-4)、多層カーボンナノチューブなどが該当します。その中で厚生労働省が作成したクロロホルム(CAS番号:67-66-3)のモデルSDSを見てみると、11項の発がん性に「実験動物では発がん性があった」とあるが、ヒトに対しての発がん性の証拠がないと記載されていることがわかります。

職場のあんぜんサイトより

2012年(平成24年)10月10日付け健康障害を防止するための指針として公示第23号で発表され、2020年(令和2年)2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第27号で改訂された内容によると、がん原性指針対象40物質の中で、発がん性区分1に該当する物質は35物質、それ以外の区分に該当する物質は5物質になります。加えて、がん原性指針対象物質及びこれらを重量の1%を超えて含有するものも、指針の対象物質となります。

ところで、がん原性指針対象物質は「指針」という言葉が少し理解を難しくしている気がします。そもそも「指針」とは、ある目的を達成するために、行動や判断の基準となるものです。具体的には、目標は達成すべき具体的な地点を示すものですが、指針はそこへ至るまでの道筋、つまり行動の方向性を示します。つまり、発がん性を過小評価してしまわぬように、がん原性物質になる可能性のあるものを提示し、リスクの見落としを最小限に抑えるためのものです。

がん原性物質への対応

この章では、がん原性物質あるいはがん原性物質が裾切値以上含まれる物質を取り扱う場合に必要な法的対応事項を整理します。

SDSへの記載

まず、「発がん性区分1(1A・1B)」に該当するものは、SDSの2項あるいは11項で「発がん性区分1(1A・1B)」を明確に表示し、危険有害性情報を記載することが求められます。「長期ばく露による健康影響」「記録保管義務」「管理手順」などをSDSへ明確に記載し、危険性の過小評価にならぬよう努めます。

ばく露を低減させる

事業者は、リスクアセスメント対象物のうち、厚生労働大臣が定めるものを製造し、又は取り扱う業務を行う屋内作業場においては、 当該業務に従事する労働者がこれらの物にばく露される程度を、厚生労働大臣が定める濃度の基準以下としなければなりません。

作業記録と健康診断の30年間保存

作業記録は、労働者の氏名、従事した作業の概要およびその期間に加え、応急措置の内容についても記録し、これらを30年間保存するとともに、リスクアセスメント対象物を製造または取り扱う業務に従事する労働者へ周知しなければなりません。

健康診断は、事業者が、リスクアセスメント対象物を製造または取り扱う業務に常時従事する労働者に対し、リスクアセスメントの結果に基づき、関係労働者の意見を聴いたうえで、必要があると認めた場合には、医師または歯科医師が必要と認める項目について健康診断を実施し、これを30年間保存します。 

対象物

作業記録等の30年間保存が必要ながん原性物質は、労働安全衛生規則第34条の2の7第1項第1号に規定されるリスクアセスメント対象物の中でも、国が行う化学物質の有害性分類結果で発がん性1に該当する物であって、2021年(令和3年)3月31日までの間において当該区分に該当すると分類されたものを指します。ただしエタノールや、特定化学物質障害予防規則(特化則)第38条の3に規定する特別管理物のもの、および事業者がそれらの物質を臨時に取り扱う場合を除きます。

がん原性指針対象物質への対応

がん原性指針対象物は、労働安全衛生法第 28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質 による健康障害を防止するための指針にて、物質ごとに異なる項目の詳細が定められています。項目内容は、以下のとおりです。

対象物質へのばく露を低減するための措置について

保護具や設備の密閉化、局所排気装置の設置等既に有機則において定める措置やその措置を講ずること等

作業環境測定について

屋内作業場にて濃度を6月以内ごとに1回測定することや、作業環境測定の結果及び結果の評価の記録を30年間保存すること等

労働衛生教育について

対象物質の性状及び有害性や、対象物質等を使用する業務、保護具の種類・性能・使用方法及び保守管理などの事項について労働衛生教育を4.5時間以上行うこと等

労働者の把握について

対象物質等を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者の氏名・従事した業務の概要及び当該業務に従事した期間・対象物質により著しく汚染される事態が生じたときは、その概要及び講じた応急措置の概要を、1月を超えない期間ごとに次の事項を記録し、30年間保存すること等

危険有害性等の表示及び譲渡提供時の文書交付について

表示・通知促進指針第4条第5項及び第5条第1項の規定に基づき、SDSを作成するとともに、その記載事項を作業場に掲示する等により労働者に周知すること等

まとめ

がん原性とがん原性指針対象物質の大きな違いは、ヒトに対して発がん性があると認められているかどうかにあります。

がん原性物質はいずれも国の有害性分類において発がん性区分1(1A・1B)に該当する物質であるのに対し、がん原性指針対象物質は、発がん性区分1に該当する物質だけでなく、それ以外の区分に分類される物質も含まれます。

また、がん原性物質やがん原性指針対象物質には、作業記録や健康診断結果の30年間保存をはじめとする、特有の厳しい管理・対応が求められます。これらの対象物質は年々増加しているため、発がん性物質を取り扱う事業者・担当者は、最新の指定状況や対応要件の確認を心がけましょう。


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執筆者 スマートSDSメディア編集部
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