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分配係数について~SDS第9項における意味と実務での読み取り方~

更新:2026.03.17スマートSDSメディア編集部

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分配係数とは、ある物質が、水と油(有機溶媒)のどちらに、どのような割合で分配されるかを示す指標です。

化学物質の評価では、一般的に水とn-オクタノール(人間の細胞膜に似ている性質のため使用される国際的な基準)

の間での濃度比が用いられ、SDSではn-オクタノール/水分配係数(log Pow)として記載されることがあります。

この値を理解すると、その物質が水になじみやすいのか、油や脂質になじみやすいのかを把握する手がかりになります。

この記事では、SDS作成者・管理者の視点から、分配係数の基本的な意味、SDS第9項での見方、実務での読み取り方を整理します。

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分配係数とは

分配係数とは、水と油(水と混ざらない有機溶媒)の間で、分離した2層ができたとき、そこにある物質(溶質)を加えて混ぜ、その物質が「水層」と「油層」のそれぞれにどれくらいの濃度で分配されたかを示す値です。

SDSで扱われることが多いのは、水とn-オクタノールの間での分配であり、これをオクタノール/水分配係数(Kow)といいます。

分配係数は次のように表されます。

Kow = Co / Cw

 Co:オクタノール相中の濃度
 Cw:水相中の濃度

実務では、この値そのものではなく、常用対数をとった log Powで表されるのが一般的です。

この値は、その物質が水相(水の層)と有機相(油や有機溶媒の層)のどちらに分配されやすいかを示しています。

つまり、物質が水側に残りやすいのか、油や脂質側に移りやすいのかを理解するための指標です。

一般的には下記数字が目安となっています。

  • logPow < 1   → 水になじみやすい  
  • logPow 1〜3 → 中間  
  • logPow > 3   → 脂溶性が高い(生物濃縮の検討対象になりやすい)

例)エタノール(log Pow ≈ -0.31)は水になじみやすい代表的な物質。一方、DDT(log Pow ≈ 6.2〜6.9)というかつて世界中で使われていた殺虫剤などの脂溶性の高い物質は、有機相(油)に分配されやすく、生物濃縮(食物連鎖の過程で濃度が濃縮される現象)の観点でも注目されることがある。

なお、物質によっては適切なデータが得られない場合もあり、「データなし」「該当しない」といった形で記載されることもあります。

この場合、分配係数だけで判断することはできないため、溶解度や蒸気圧など他の物性値を確認して物質の挙動を考えることが重要になります。

分配係数の値から読み取れること

分配係数の値を見ることで、その物質が水と油のどちらになじみやすいかを判断する手がかりになります。

一般に、

log Pow が低い場合

  • 水側に分配されやすい
  • 水になじみやすい
  • 水環境中を移動しやすい可能性がある

log Pow が高い場合

  • 油や有機物の側に分配されやすい
  • 脂溶性が高い
  • 生体の脂質や有機物に移行しやすい可能性がある

ただし、分配係数だけで物質の挙動を断定することはできないため、他の情報と併せて確認することが重要です。

分配係数の実務への応用

分配係数は、化学物質の環境中での移動や生体内での振る舞いを考える際の参考になります。

例えば、log Pow が高い物質は脂溶性が高いため、生物の脂肪組織などに取り込まれやすい可能性があります。このため、生物濃縮性を検討する際の参考指標として利用されることがあります。

一方、log Pow が低い物質は水相に分配されやすいため、排水や漏えい時に水環境へ広がりやすい可能性を考える材料になります。

SDS作成や確認の実務では、次のような観点で役立ちます。

  • 第12項の生物濃縮性が高い(蓄積性がある)の記載と整合しているか確認する(logpow>3を目安)
  • 溶解度と合わせて、水中に移行・拡散しやすい物質かを考える(logPow<1を目安)
  • 蒸気圧と合わせて、空気中に蒸発して広がりやすい物質かどうかを考える(logpow>3かつ蒸気圧0.1kPaを目安)
  • 物質の性質を説明する際の補足情報として使う

このように分配係数は、物質が最終的に空気・水・土(泥)のどこに行き着くのか(環境動態)」をおおよそイメージすることができる、物質の挙動を理解するための補助的な物性値として活用されるのです。

SDSの他項目との関係

分配係数は、他の物性値と合わせて読むことで、より実務的な理解につながります。

溶解度との関係

溶解度は、物質が水などの溶媒にどの程度溶けるかを示す値です。

分配係数と溶解度を併せて確認することで、その物質が水中に存在しやすいのか、あるいは油や有機物側に偏りやすいのかをより具体的に考えることができます。

蒸気圧との関係

蒸気圧は、物質がどれだけ蒸発しやすいかを示す指標です。

分配係数と蒸気圧を併せて見ることで、環境中に漏れ出た際に水系には留まらず、水面から大気中へどんどん移行していく性質(ヘンリーの法則)といった環境中での挙動をイメージしやすくなります。

生物濃縮性との関係

SDS第12項には、生物濃縮性に関する情報が記載されることがあります。

一般に、log Pow が高い物質は脂溶性が高いため、生体内に蓄積しやすい可能性の参考指標として利用されます。ただし、第12項にBCF(生物濃縮係数)が記載されている場合はそちらを優先してください。

まとめ

分配係数とは、物質が水と有機相(油や有機溶媒)のどちらに分配されやすいかを示す指標です。SDSでは主に n-オクタノール/水分配係数(log Pow)として記載されます。

この値を理解することで、

  • 水環境中での移動しやすさ
  • 油や脂質へのなじみやすさ
  • 生体内への蓄積の可能性

といった物質の性質を考える手がかりになります。

また、分配係数は単独で判断するのではなく、溶解度、蒸気圧、生物濃縮性などの情報と合わせて確認することが重要です。

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執筆者 スマートSDSメディア編集部
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